ヘルパンギーナの症状や溶連菌との見分け方・熱がない場合について
投稿日: 2022年08月30日 | 更新日: 2024年08月06日
夏になると毎年のように子供たちの中で流行する『夏の三大感染症(手足口病・ヘルパンギーナ・咽頭結膜熱(プール熱)』解説シリーズの第二弾となります。
今回は、「ヘルパンギーナ」について、わかりやすい形で解説していこうと思います。
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目次
ヘルパンギーナとは?
ヘルパンギーナは、手足口病と同様に感染症法で「5類感染症」に定められており、定点把握疾患(決まった病院が発生数を毎週報告する)となっている感染症です。
新型コロナウイルス感染症の流行以降は飛沫感染・接触感染などを感染経路とする様々な感染症の減少が報告されてきました。
しかし、毎年夏季に流行していたヘルパンギーナの報告数は、増加傾向にあるため注意が必要です(下図参照)。
ヘルパンギーナの発生動向
(厚生労働省/国立感染症研究所 感染症発生動向調査感染症週報IDWR2022年第28週 7月11日~7月17日:通巻第24巻第28号より引用)
まずは、ヘルパンギーナの概要について説明していきます。
ヘルパンギーナの原因は?
ヘルパンギーナは、コロナウイルスやインフルエンザと同じ、ウイルス感染によって引き起こされる感染症です。
以下のような複数のウイルスが原因となります。
コクサッキーウイルスA群・コクサッキーウイルスB群・エコーウイルスやエンテロウイルス(68-71)
コクサッキーウイルスやエンテロウイルスというと、前回のテーマである「手足口病」の原因ウイルスと同じことに気が付く方もいるかもしれません。
これらのウイルスは、手足口病だけでなく、ヘルパンギーナの原因にもなります。
関連記事:手足口病の症状や潜伏期間、子供だけでなく大人の初期症状やうつる確率について解説
ヘルパンギーナの流行時期や感染経路は?
ヘルパンギーナは5月頃から発生しはじめ、ピークは7月頃にあります。
そして、8月頃から減少しはじめ、10月頃にはほとんど見られなくなります。
感染の拡大規模は毎年ほぼ同様といわれています。
患者は手足口病と同様で乳幼児に多く、発症者の90%近くは5歳以下であり、1歳の感染者が最も多くみられます。
感染経路としては、以下の通りです。
●飛沫感染
●接触感染
●糞口感染(ウイルスを含む糞便が手指に付着し、口などに入るルート)
特に幼稚園や保育園では、感染予防策が弱いことに加えて、原因ウイルスへの感染経験がない子供の割合が多いため、感染拡大が起こりやすいと考えられます。
ヘルパンギーナの症状
ヘルパンギーナの症状について詳しく説明します。
ヘルパンギーナの潜伏期間
ヘルパンギーナは感染したのち2-4日間の潜伏期間があります。
潜伏期間の間に周囲に感染を広げる可能性は低いと考えられています。
ヘルパンギーナのよくみられる症状
ヘルパンギーナでは潜伏期間のあとに次のような症状が急性にみられることが特徴的です。
・発熱
・咽頭痛
・食欲不振
・のど(軟口蓋・口蓋弓)の小水疱
続いてそれぞれの症状について少し詳しく説明していきます。
発熱
ヘルパンギーナの発熱は手足口病とは異なり、38℃~40℃といった高熱が突然発症することがあります。
発熱は2-4日間で下がることがほとんどです。
突然の高熱であるため、発熱時に熱性けいれんを伴う場合があります。
口・のどに出る症状
発熱に続いて咽頭痛が出現し、咽頭粘膜の著明な発赤が起こります。
さらに、口蓋垂(のどちんこ)の周りである軟口蓋から口蓋弓にかけて直径2mm程度の紅暈(こううん、皮膚の部分的な充血による発赤)で囲まれた小水疱が出現します。(下図参照)。
小水疱はやがて破れ、浅い潰瘍を形成するため、口内炎のような痛みを伴います。
口の中が痛くなるため、子供の場合は機嫌が悪くなります。
また、食事や水分、母乳やミルクなどの摂取が少なくなることで脱水症となる場合があります。
特に子供では水分摂取量に気を付けてください。脱水症の目安としては飲水量も大切ですが、尿量(おしっこに行く回数やおむつ替えの回数)のあきらかな減少を気にするとよいと思います。
その他の症状
ヘルパンギーナは軽い症状でおさまってしまうことが多いですが、ごくまれに次のような重症な状態となることがあります。
- 無菌性髄膜炎:頭痛、嘔吐、首の後ろの痛みなどがおきます。
- 急性心筋炎:急に心臓の動きが悪くなり、血圧がさがったり、脈拍がさがったりします。B群コクサッキーウイルス感染で発生することがあります。
しかし、これらのような重篤な症状はほとんどみられることはありません。
熱がないのにヘルパンギーナになる?
周囲には手足口病やヘルパンギーナが流行っており熱はないが、口内炎の症状がみられる子供がいるかと思います。
ヘルパンギーナかなと思う方もいると思いますが、これはヘルパンギーナではありません。
厚生労働省の示すヘルパンギーナの症状は
- 突然の高熱での発症
- 口蓋垂付近の水疱疹や潰瘍や発赤
であり、発熱がヘルパンギーナと診断するにあたって重要な要素となります。
熱がない場合でも経過とともに口内炎は消失することが多いと思います。
しかし、数週間にわたって口内炎が治らないようでしたら他の病気の可能性がありますので、病院で精査をしてもらう方が良いと考えます。
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ヘルパンギーナと溶連菌との違いや見分け方
ヘルパンギーナと溶連菌感染症はいずれも高熱とのどの痛みを示す病気になります。
2つの病気の大きな違いとしては以下の通りです。
・感染する病原体
・治療法
・皮疹(発疹)の部位
まず、ヘルパンギーナはウイルス感染によって引き起こされますが、溶連菌感染症は細菌感染による感染症になります。
そのため治療法が大きく異なります。
ヘルパンギーナに対しては抗ウイルス薬が存在せず、基本的に症状に対して薬を使用していく対症療法が治療方針となります。
一方で、溶連菌感染症は対症療法で治癒することもありますが、抗生剤治療が有効となります。
また、ヘルパンギーナの発疹は水ぶくれを基本とする水疱性発疹ですが、溶連菌感染症では赤色の発疹が体や手足、舌に出ることが特徴的となります。
関連記事:溶連菌感染症の症状について|大人にもうつるのか?潜伏期間は?何日休めばいい?
ヘルパンギーナと手足口病との違いや見分け方
ヘルパンギーナと手足口病は同じウイルスが原因となる病気です。
大きな違いとして2点あります。
・発熱
・水疱の部位
まず、発熱についてですが、ヘルパンギーナは40℃近い発熱を伴うのに対し、手足口病は発熱しないことも多く、発熱したとしても38℃以下であることが多いです。
水疱の場所にも違いがあります。
ヘルパンギーナは口の中でも特に口蓋垂(のどちんこ)の周囲である軟口蓋から口蓋弓だけに水疱ができます。
一方で手足口病も口の中に水疱ができますが場所としては歯茎や舌などに発生します。
また、手足にも同じような水疱がみられ全身に水疱性発疹がみられることが特徴的です。
しかし、どちらの感染症も有効な治療薬は存在しないため、対症療法で経過を見ていくこととなります。
ドクターが「どっちかなぁ・・?」と悩んでいる光景に出会い不安になることもあるかもしれません。
私も悩むような患者さんに出会うことがあります。ただ、どちらの病気でも治療法は同じですので、ご心配は不要と思います。
悩む患者さんの簡単な見分け方としては、「周囲ではやっていて、皮膚に水疱が出たら手足口病」と思っていただいてよいと思います(過信は禁物です!!)。
関連記事:手足口病の症状は?潜伏期間やうつる確率についても解説
ヘルパンギーナになった時の幼稚園・保育園への対応
ヘルパンギーナは新型コロナウイルス感染症やインフルエンザのように、出席停止や隔離といった決まりはありません。
本人が元気であれば登園、登校は可能となります。
しかし、周囲への感染を予防するためトイレ後などにはしっかりと手洗いを行いましょう。
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家庭や市販の薬でのヘルパンギーナ対処方法
ヘルパンギーナを引き起こすウイルスに対する効果的な薬はありません。
基本的に症状に対しての薬を使用して経過観察となります。
のどに痛みを伴うため、食事の摂取は難しいこともありますが、水分補給はしっかりと行ってください。
オレンジジュースや炭酸水といった刺激の強い飲み物の摂取は控えることをおすすめします。
お勧めする食べ物としては
- アイスクリーム(最もオススメ!!)
- プリン
- ゼリー
- ヨーグルト、牛乳
などとなります。
また、薬については一般的に薬局などで販売されている風邪薬や解熱剤が使用可能となります。
しかし、子供の体重に合わせた投与量の薬は少ないです。
大人用の薬剤の量を減らして使用することは危険が伴います。
また、他の疾患であった場合、自己判断での経過観察は危険を伴う場合があります。
不安な場合は病院の受診をよろしくお願いします。
関連記事:ヘルパンギーナとは?症状や潜伏期間について徹底解説
ヘルパンギーナの感染予防
ヘルパンギーナに有効なワクチンはなく、予防できる薬や治療できる薬もありません。
ヘルパンギーナは、くしゃみなどの際に出る飛沫によって感染する「飛沫感染」と、舐めて唾液や鼻水がついた手が触れることで感染する「接触感染」が主な感染経路です。
・患者との接触後は必ず手洗いうがい・手指消毒をする
・子供の排泄後はしっかり手洗い・手指消毒をする
・赤ちゃんのおむつ交換の後は、しっかりと手洗い・手指消毒をする
・近所で流行っている場合には、おもちゃの貸し借りにも注意しする
・次亜塩素酸ナトリウム(0.02%)や場合により消毒用エタノールで使用後のおもちゃは消毒する
感染を拡大させないためにも感染経路をきちんと把握して、予防をしましょう。
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ヘルパンギーナで病院を受診する目安
自宅で経過をみていて、病院を受診するタイミングがわからず迷うこともあると思います。
【熱性けいれんを起こしたとき】
救急車を呼びましょう。けいれんの様子を動画で撮影していただけると病院で役立ちます。
【水分がとれないとき】
食事はとれなくても大丈夫です。水分も取れない場合は点滴等が必要です。
判断に困った場合は、家来るドクターにご相談いただければ、病院受診の判断をいたします。
また、必要であれば往診を行いますのでお気軽にお問い合わせください。
関連記事:大人が溶連菌感染症になる原因は?合併症や治療方法を解説
病院や家来るドクターでできるヘルパンギーナの治療
病院や家来るドクターでは、診断と症状にあった投薬をおこなうことができます。
家来るドクターでも病院とかわらない内容での投薬が可能ですので、ヘルパンギーナを疑うような症状が見られた際はご相談ください。
また、溶連菌感染症の検査を行うことが可能ですので、どちらの病気か判断することができます。
溶連菌感染症と判明した場合は抗生剤投与が可能となります。
ヘルパンギーナは周囲の感染状況が診断のおおきなポイントになりますので、保育園・幼稚園・学校・家庭などでの状況を把握していただくことが重要です。
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まとめ
今回は夏の三大感染症シリーズの第二弾として、ヘルパンギーナについてご説明いたしました。
ひどい咽頭痛が起き、コロナウイルス感染症の除外も必要かと思いますので、子供の発熱と咽頭痛が起きた際はご相談ください。
比較的軽症な患者さんが多いかと思いますが、時に熱性けいれんなど、救急受診が必要となることがあることは覚えておいてください。
手洗いという簡単な対策で感染を予防することができますので、子供が感染した際はぜひとも感染対策をしていただくようお願いいたします。
参考資料
執筆者
経歴
- 西春内科在宅クリニック
経歴
- 名古屋市立大学 卒業
- 豊橋市民病院 初期研修医勤務
- 豊橋市民病院 耳鼻咽喉科
- 名古屋市立大学病院 耳鼻咽喉科
- 一宮市立市民病院 耳鼻咽喉科
- 西春内科・在宅クリニック 副院長
- 横浜内科・在宅クリニック 院長
- >>詳しいプロフィールはこちらを参照してください。