ウイルスと細菌の違いは何?わかりやすく簡単に解説
投稿日: 2024年09月17日 | 更新日: 2024年09月20日
ウイルス感染症や細菌感染症という言葉を耳にしたことはありませんか?
たとえば、風邪やインフルエンザ、食中毒などはウイルスや細菌が原因で発症する病気の一例です。
ただし、ウイルスと細菌は全く別の存在で、特徴も異なり、治療に使う薬も違います。
今回は、ウイルスと細菌の違いを分かりやすく解説し、それぞれの特性や感染症の予防方法について詳しく説明します!
目次
ウイルスとは?
ウイルスは非常に小さな病原体で、生物の細胞に寄生しないと増殖できません。
単独では活動できず、細胞に侵入し、細胞の仕組みを使って自己複製します。
ウイルスは核酸(DNAまたはRNA)の内部と、タンパク質の外殻で構成されています。
また、エネルギーを作らず、代謝も行わないため、生物とは言い切れません。
以下は、よく知られている代表的なウイルスです。
- インフルエンザウイルス: 毎年冬に流行し、季節性インフルエンザを引き起こす
- ライノウイルス: 一般的な風邪の原因となる
- コロナウイルス: COVID-19の原因となるSARS-CoV-2を含む、さまざまなウイルスの総称
- アデノウイルス: 咽頭炎や結膜炎などを引き起こす
- エンテロウイルス: 手足口病などを引き起こすウイルスの一種
- RSウイルス: 主に乳幼児に呼吸器感染症を引き起こす
- ノロウイルス: 急性胃腸炎を引き起こす
- ロタウイルス: 乳幼児に重い下痢をもたらす
- ヘルペスウイルス: 口唇ヘルペスや性器ヘルペスを引き起こす
これらのウイルスは、それぞれ異なる感染経路や症状を持ち、予防や治療方法も多岐にわたります。
細菌とは?
細菌は単細胞の微生物で、栄養と水、適切な環境さえあれば自力で増殖することが出来ます。
人に害を与えない乳酸菌や納豆菌もありますが、肺炎を引き起こす結核菌や、食中毒を引き起こすサルモネラ菌には注意が必要です。
以下は、よく知られている代表的な細菌です。
- 大腸菌: 通常は腸内に無害な形で存在しますが、一部は食中毒の原因になる
- 黄色ブドウ球菌: 皮膚感染や食中毒の原因
- ピロリ菌: 胃潰瘍や胃がんの原因
- サルモネラ菌: 生卵や生肉などから感染し、食中毒を引き起こす
- 結核菌: 主に肺に感染し、結核を引き起こす
- カンピロバクター: 鳥肉などから感染し、食中毒の原因
- ボツリヌス菌: 神経毒素を生成し、非常に危険な食中毒を引き起こす
これらの細菌に感染すると、さまざまな病気を引き起こす可能性があるため、適切な予防と治療が重要です。
関連記事:感染症の分類や種類を簡単解説|なぜコロナは5類になったの?
ウイルスと細菌の違いは?
ウイルスと細菌の違いを表にまとめたのでご覧ください。
ウイルス | 細菌 | |
大きさ | 細菌の50分の1の大きさ、約20~300ナノメートル | 約0.5~5マイクロメートル |
構造 | 核酸とタンパク質の外殻 | 細胞膜、細胞質、DNAを持つ |
生命活動 | 宿主がいないと生存できない | 独立して生存可能 |
増殖方法 | 宿主の細胞の仕組みを利用して増殖 | 自力で増殖可能 |
治療方法 | 抗ウイルス薬、ワクチン | 抗生物質 |
大きさ
ウイルスは細菌の50分の1ほどの大きさで、人間の頭髪(約0.1ミリ)の1,000分の1ほどしかありません。
単純な構造であり、宿主の細胞の中に入り込む必要がある為です。
構造
ウイルスは核酸とたんぱく質という単純な構造で、細菌は細胞膜や細胞壁、DNAという一つの生命体です。
単純なつくりだから弱いかというとそうではなく、むしろ弱点が少なく、抗ウイルス薬の開発が困難です。
増殖方法
細胞は適切な環境、栄養、水があれば自力で増殖することが可能です。
食材が痛んだり、発酵するのはこのためです。
ウイルスは細胞分裂する仕組みが備わっていない為、宿主の細胞を使わなければ増殖はおろか、長期間生存することもできません。
治療方法
細菌は抗生物質を使って治療します。
抗生物質と抗生剤、抗菌薬は呼び名が違うだけで、全て同じものです。
ウイルスには抗生物質は効果がありません。
ワクチンを接種して予防するか、抗ウイルス薬を使って治療します。
ウイルスと細菌はどちらが怖い?
ウイルスも細菌も病気の原因となりますが、どちらが怖いとは一概には言えません。
病気の重さは病原体の種類や体調、免疫力によって異なります。
ウイルスにはエボラや狂犬病ウイルスのように致死率の高いものもあれば、ライノウイルスのように軽い風邪を引き起こすものもあります。
細菌も同様に、猛毒を持つ破傷風菌やボツリヌス菌もあれば、軽い食中毒を引き起こすものまで様々です。
重要なのは、ウイルス性感染症に抗生物質は効かないことです。
風邪やインフルエンザには抗ウイルス薬やワクチンが必要になります。
関連記事:家族内での感染を防ぐために|ウイルスや病原菌から家族を守る
一番怖いのは、薬剤に効かない体になる事!
かつては「抗生剤を飲めば病気が治る」と考えられていましたが、今ではその考え方は大きく変わっています。
今の医療では、抗生剤の使用は慎重に判断され、必ずしも処方されるわけではありません。
細菌は環境に適応し、進化し続けます。
抗生剤を使うと、細菌は薬に対抗するように変化し、やがて薬が効かなくなることがあります。
抗生剤を使いすぎたり、間違って使うと、薬が効かない耐性菌が増える可能性が高まります。
この耐性菌は従来の治療では効果が得られにくくなり、感染症が治らなかったり、重症化することもあります。
抗生剤の乱用や不適切な使用によるリスク
- 薬が効かない耐性菌の増加
- 感染症が治らなくなる
- 重症化のリスクが高まる
医師たちは、以下の点を徹底しています。
- 必要な場合にのみ抗生剤を使用
- 耐性菌の発生を防ぐ適正使用
本当に必要な場合にだけ抗生剤を使用し、耐性菌の発生を防ぐための取り組みが重要視されているのです。
ウイルスや細菌への対処法
ウイルスや細菌による感染症を防ぐためには、医学的な治療法と日常生活での予防策の両方が重要です。
感染経路に応じた対策を理解し、実践することで感染リスクを大幅に減らせます。
ウイルスへの対処法
ウイルスへの医学的な治療法は、予防接種と抗ウイルス薬を使用します。
特にインフルエンザや新型コロナウイルスに対しては、予防接種が効果的です。
感染後の治療には、インフルエンザに対するタミフルのような抗ウイルス薬が効きます。
これらはウイルスの増殖を抑え、重症化を防ぎます。
日常的な感染予防対策として、手洗い、うがい、マスクの着用、アルコール消毒が非常に効果的です。
これらの対策は特に飛沫感染しやすいウイルスに対して有効で、感染の拡大を防げます。
細菌への対処法
細菌感染の医学的な治療法には、主に抗生物質が使われます。
しかし、抗生物質は乱用すると耐性菌が出現するため、医師の指示に従って正しく使用することが大切です。
日常的な感染予防対策として、手洗いや食材の衛生管理が効果的です。
さらに予防接種も大切で、結核や破傷風のような病気は予防接種によって感染リスクを大幅に減らせます。
ウイルスと細菌に共通する予防策
ウイルスや細菌による感染を防ぐためには、次のような日常的な予防策が効果的です。
手洗いの徹底
外出後やトイレの後、食事の前などに石けんで手をしっかり洗います。これが最も基本的で重要な対策です。
マスクの着用
人が多い場所や風邪の症状がある時には、マスクをして自分や他人への感染を防ぎます。
換気の徹底
空気の流れが悪い環境では、ウイルスや細菌が空気中に残りやすくなるため、定期的に換気を行います。
バランスの良い食事と睡眠
免疫力を高めるために、栄養バランスの取れた食事や十分な睡眠が欠かせません。
適度な運動とストレス管理
適度な運動やストレス管理も免疫力を維持するために大切です。
ストレスが溜まると免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなることがあります。
これらの予防策を日常的に実践することで、ウイルスや細菌による感染リスクを効果的に減らすことができます。
予防は感染症に対する最も強力な武器であり、普段から心がけることが重要です。
家来るドクターでできる感染症の対応
家来るドクターでは、夜間休日の往診を行っています。
往診では、お薬の処方はもちろん、インフルエンザ・コロナ、溶連菌などの検査が行えます。
受診すべきかどうかも含めて、ご不安なことがあればお気軽に問い合わせくださいね。
まとめ
ウイルスと細菌はどちらも健康に影響を与える病原体ですが、性質や対処法が異なります。
ウイルスは宿主に依存して増殖し、ワクチンや抗ウイルス薬で対処します。
細菌は自力で生きることができ、抗生物質で治療可能です。
日常生活での予防策を徹底し、適切な治療を受けることで、感染症のリスクを減らしましょう。
参考文献
TOKYO BUSINESS CLINIC「細菌性とウイルス性の違いって? コロナに抗生剤は効かない?!」
執筆者
経歴
- 名古屋市立大学 卒業
- 豊橋市民病院 初期研修医勤務
- 豊橋市民病院 耳鼻咽喉科
- 名古屋市立大学病院 耳鼻咽喉科
- 一宮市立市民病院 耳鼻咽喉科
- 西春内科・在宅クリニック 副院長
- 横浜内科・在宅クリニック 院長
- >>詳しいプロフィールはこちらを参照してください。