大人のウイルス性・細菌性の胃腸炎の原因や症状、改善方法|嘔吐や下痢の原因?
投稿日: 2021年07月31日 | 更新日: 2024年08月02日
嘔吐や下痢はありふれた病気です。
しかし、症状がとても重かったり、長く続いたりする場合は大人でも不安になりますよね。
それが小さなお子さんや体力が無い高齢者である場合はなおさらです。
消化器官が悪いのか、食べている食品が悪いのか…
原因がわからないこともたくさんあります。
そこで、今回はよくある嘔吐や下痢の原因となる感染性胃腸炎について医師がくわしく解説します。
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目次
感染性胃腸炎とは?
感染性胃腸炎とは、主にウイルスや細菌などの微生物が胃腸に感染しておこります。
夏は気温が高いため細菌性が流行しやすく、冬は乾燥するためウイルス性が流行します。
感染症胃腸炎の原因となるウイルスや細菌には以下のようなものがあります。
ウイルス性の胃腸炎
出典:感染性胃腸炎患者からの原因ウイルス検出状況(平成19年度)
ノロウイルスとは、ウイルス性の感染症の1つで主に冬場に多発します。
乳幼児から高齢者までの幅広い年齢層に急性胃腸炎を引き起こします。
長期免疫が成立しないため何度もかかります。
ロタウイルスとは、2〜3月にかけて最も多く発生します。
乳幼児をはじめ子どもに多い急性胃腸炎を引き起こします。
他のウイルス性胃腸炎に比べ、下痢や嘔吐の症状が激しいことが多くあります。
入院が必要な小児急性胃腸炎の原因のうち約50%を占めるとされています。
アデノウイルスとは、以下などに感染症を起こすウイルス性の感染症の1つで主に夏場に多発します。
・目
・腸
・呼吸器
・泌尿器
51の型に分類され、病気と関係が深いのは1~8型です。
その中でも主に3型によるものは咽頭炎と結膜炎をおこすタイプでプール熱と呼ばれているものです。
多くの型があるため、免疫がつきにくく、何回もかかることがあります。
サポウイルスは、年間を通して胃腸炎を起こします。
ノロウイルスと同じカリシウイルス科に属するウイルス性感染症です。
乳児から成人まで幅広く感染します。
ノロウイルスより比較的軽症で治療を必要とせずに軽快することも多いです。
関連記事:ウイルス性胃腸炎の症状で下痢のみが起きる理由|何日で治る?
細菌性の胃腸炎(食中毒)
カンピロバクターとは、鶏・豚・牛の腸内に生息している細菌です。
鶏肉や井戸水、犬・猫などのペットの糞便にもあるため、注意が必要です。
潜伏期間は1~7日です。
サルモネラは、人や牛・豚・にわとりなどの家畜の腸内、河川・下水など自然界に広く生息する細菌です。
保菌しているネズミ・ハエ・ゴキブリや、犬・猫・カメなどのペットからも感染することがあります。
潜伏期間は6~72時間です。
腸管出血性大腸菌O157とは、毒力の強いベロ毒素を産生する大腸菌の一種です。
激しい腹痛と水溶性の下痢、血便がみられます。
抵抗力の弱い乳幼児や小児、高齢者が感染すると、神経学的障害や腎機能などの後遺症を残す可能性があります。
食中毒が多発する初夏から初秋にかけて特に注意が必要です。
動物の腸内に生息しており、汚染された食肉やその加工品を食すことで感染します。
感染者の便で汚染された手指で取り扱う食品などを介して二次感染を起こす場合もあります。
十分な加熱調理、手洗い・消毒を徹底することで二次感染を予防することもできます。
潜伏期間は3~8日程度です。
ウェルシュ菌とは、土や水の中、人や動物の腸内など自然界に幅広く生息している細菌です。
特に牛・鶏・魚が保菌していることが多く、汚染された肉類や魚介類を使った「煮込み料理」には注意が必要です。
酸素(空気)がないところでも増殖し、潜伏期間は6~18時間です。
黄色ブドウ球菌とは、人や動物の化膿してる傷口をはじめ、手指・鼻・のど・耳・皮ふなどに広く生息している細菌です。
健康な人の20〜30%が保菌していると言われています。
おにぎりやサンドイッチなど手作り食品には要注意です。
潜伏期間は30分~6時間です。
腸炎ビブリオとは、海水や海産の魚介類やその加工品などに生息している細菌です。
増殖速度がきわめて速く、主に夏季に短時間で急激に増殖します。
調理する過程で手をはじめ、まな板・包丁を介して二次汚染された食品からも感染します。
潜伏期間は8~24時間です。
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ウイルス性胃腸炎・細菌性胃腸炎の症状
ウイルス性胃腸炎・細菌性胃腸炎の主な症状は以下などです。
- 腹痛
- 嘔吐
- 下痢
- 発熱
- 悪心
病原菌によっては血便が出ることもあります。
重傷の場合は脱水症状を引き起こします。
原因の病原体により異なりますが、潜伏期間は1~3日程度です。
通常3日程度で症状は回復します。
関連記事:急性腸炎ってなに?ストレスが関係する?原因や症状について
ウイルス性胃腸炎・細菌性胃腸炎の治療方法は?
多くはウイルス性のため、特別な治療法は無く、症状に応じた対症療法が行われます。
具体的には、嘔吐や下痢がおさまるまでは、飲食を避けて安静にし、様子をみます。
症状がおさまってきたら少量の水分から摂取を開始します。
経口補水液(市販のOS-1など)が望ましいです。
吐き気止めや下痢止めは基本的には使用しません。
なぜならウイルスや細菌が体内から排出されるのを妨げ、逆に症状回復が遅くなる可能性があるからです。
小さなお子さんや高齢者では、脱水症状を起こすことがあります。
症状が重い場合は早めに医療機関を受診することが大切です。
ウィルス性胃腸炎・細菌性胃腸炎はどこからうつるの?
感染性胃腸炎の感染経路はほとんどが経口感染です。
つまり、原因の細菌やウイルスを口から取り込んでしまい、感染します。
患者さんの糞便や嘔吐物には大量の病原体が含まれています。
適切な処理を行わなければ、人の手を介して二次感染したり、風に乗って舞い上がり飛沫感染をおこします。
特に学校や保育園、家庭などでは、こうした二次感染で広がってしまうことが多いです。
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ウイルス性胃腸炎・細菌性胃腸炎の予防法
ウイルス性・細菌性胃腸炎の予防|手洗い
どのウイルスや細菌が原因でも、最も重要なのは手洗いです。
石けんを使って十分な量の流水で洗うのが効果的です。
手についたウイルスが口に入る前に手洗いを行うイメージで以下の際などに行いましょう。
- 食事の前後
- 帰宅後
- 調理の際
なお、最近は新型コロナウイルス感染症対策として、いたるところにアルコール手指消毒剤が置かれています。
しかし、感染性胃腸炎の大きな原因であるノロウイルスでは、アルコール消毒は無効です。
どのような病原体が原因でも、手洗いは効果を発揮します。
アルコール消毒を過信せずにまずは手洗いを徹底してください。
ウイルス性・細菌性胃腸炎の予防|嘔吐物、糞便の処理
嘔吐物や下痢便の処理を行うときは、二次感染の危険が高まるため注意が必要です。
直接、汚染物が肌に付着しないようにしましょう。
使い捨ての手袋、エプロン、マスクを付けて処理を行うことが大切です。
また、嘔吐物や下痢便が乾く前に速やかに拭き取ります。
このとき、ペーパータオルなど使い捨てのものを使うことをおすすめします。
拭き取った汚物や使用した手袋などはビニール袋など密閉できる袋にいれ、しっかりと口を閉めて処分します。
部屋の換気も忘れずに。
拭き取ったあとは、家庭用の塩素系漂白剤やアルコールなどを希釈したもので再度拭き上げ、消毒します。
ウイルス性・細菌性胃腸炎の予防|食材の加熱や消毒
食品の加熱が不十分であったり、調理後時間が経ってしまった食べ物が原因で感染性胃腸炎になる場合もあります。
加熱用の食材はしっかりと火を通してから食べましょう。
調理前にしっかりと手を洗うこと、包丁やまな板などの洗浄や消毒をするなどの対策も必要です。
また、以下も感染の原因になりますので避けるようにしましょう。
- 症状がでてしまった家族と同じ皿から食事する
- タオルなど洗面用具の共用
ウイルス性・細菌性による胃腸炎の受診の基準と脱水症状の見分け方
基本的には対症療法で症状がおさまるまで様子をみることが治療となります。
しかし、以下のような場合は、病院の受診や夜間休日は家来るドクターの往診をご検討ください。
- 激しい嘔吐が続き、水分を自力でとることもできない(特に子ども・高齢者)
- 吐いたものに血や緑色の吐物が混じる
- 下痢に血便や黒色便がみられる
- 強い腹痛・頭痛、しびれ、ふらつきなどがある
- 意識がもうろうとしている
- 表情がうつろ けいれんがみられた
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治った判断が難しいウイルス性・細菌性胃腸炎の回復のサインとは?
一般的なウイルス性胃腸炎の場合では、最初の症状は強いものの1~3日程度で自然に軽快傾向になります。
1週間程度で多くは改善します。
しかし、一部の細菌性腸炎は抗生剤投与を必要とすることがあります。
病状としては回復した後もウイルスは糞便中に含まれていることがあります。
特に注意を要するノロウイルスの場合、最長で1か月間は残存していることがあります。
症状が改善したからといって油断せず、感染拡大防止のためにしばらくは消毒をするなどを継続しましょう。
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まとめ~大人のウイルス性・細菌性胃腸炎の症状を改善する方法~
感染性胃腸炎は、原因病原体が多数存在します。
そのため、一年を通じて流行します。
感染力が強く、ほとんどが経口感染です。
家庭内や学校など、身近な人からうつることが多いです。
原因や感染経路を知り、正しく予防して感染の拡大を防ぎましょう。
参考文献
執筆者
経歴
- 医師,放射線診断専門医
- 2009年 愛知医科大学卒業
- 2009年 津島市民病院
- 2011年 名古屋第二赤十字病院 放射線科
- 2016年 名古屋市立大学病院 放射線科
- 2018年 豊田若竹病院 放射線科
- 2018年 家来るドクターJAPAN株式会社 顧問医師
- 2021年 YKR medical consult代表就任