吐き気がみられる腹痛で病院を受診する目安は?考えられる原因や対処方法について、医師が解説します。
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夜中や休日に、腹痛や嘔吐があったとき、とても不安になると同時に、どの時点で病院に行くべきか、とても悩みますよね。
吐き気と腹痛を起こす病気の原因としては非常に多くの疾患が考えられ、多くの臓器が関わるため、ときに病院でも診断に苦労することがあります。ここでは特に緊急性の目安を中心に解説していきたいと思います。
*ここでの「緊急性」は一晩の間にも対処を必要とするかどうかとします。長期的な予後とは異なる問題となります。
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腹痛と吐き気がある場合に考えられる病気とは?
腹痛と嘔気を起こす疾患として考えられる疾患は多岐にわたります。頻度の高いものに限定しますが以下のような例があげられます。
緊急性の低いもの:便秘症、急性胃腸炎、消化性潰瘍(出血したものを除く)、尿管結石(発熱を伴わないもの)、生理痛、心身症、消化不良、帯状疱疹、悪性腫瘍
緊急性の高いもの:急性虫垂炎、急性胆嚢炎・胆石症、腸閉塞、急性膵炎、消化性潰瘍(吐血や下血を伴うもの)、骨盤内腹膜炎、憩室炎、腸重積、ヘルニア、卵巣出血、卵巣茎捻転、子宮外妊娠、腎盂腎炎、外傷性臓器損傷
緊急性の最も高いもの:急性心筋梗塞、急性汎発性腹膜炎、大動脈瘤破裂・解離、各種感染症のうち敗血症を伴うもの
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救急受診を考えるべき腹痛
上記の疾患以外にも、腹痛や嘔気に関連する疾患は多くありますが、特に緊急性が考慮されるものの傾向としては
- 発熱を伴うもの(特に血圧の低下を伴うもの)
- 突然、症状が出たもの
- 腹部をおさえたときに強い痛みを伴うもの
これらの特徴を伴うものに、特に緊急性の高いものが多くみられます。
感染症に属するものでは、悪化した場合、血液に細菌が侵入し臓器に障害をきたす場合があり、これを敗血症と呼びます。発熱しているなかで急に全身のふるえをきたした場合は敗血症の疑いがあります。また、最も悪化した場合、血圧が低下しショック状態に陥る場合もあります。
病状としては緊急性がなくても、高齢者や持病のある方は悪化しやすい場合もあります。小児の場合は、成人と各疾患の頻度が異なります。小児の腹痛の原因としては、便秘症が最も多いです。次いで急性胃腸炎があげられます。緊急性の高いものでは急性虫垂炎、および腸重積があります。
急性胃腸炎であっても、脱水傾向になった場合など、状況によって緊急性が異なることもあります。ご心配なときは、まずはご相談いただければと思いますが、その際には以下の点を確認してご連絡いただけますと判断しやすくなります。
- 腹痛の部位(全体が痛いか、もしくは限られた場所が痛いかなど)、急激に発症したか、もしくはだんだんと悪化したか。持続的に痛むか、もしくは波があるか。
- 発熱の有無
- 血圧の低下の有無
- 最近の排便状況・回数や頻度・便の性状(下痢はしていないか、血便はないか、異常に黒いものではないかなど)
- 表面の変化はないか(どこかに急にふくらんだものはないか、湿疹の出現はないかなど)
- 嘔吐があった場合は血液の混入がみられないか(明らかな鮮血の場合以外に、胃液と血液が混じった場合は黒色となります)
- これまでに診断されている疾患、特にお腹の手術を受けた経験(以前のものでも関係してくることがある)
- 直近で腹部の外傷はないか(数日の時間差があっても関係することがあります)
家庭でできる対処方法
ご自宅で対応される場合は、症状の変化に注意しつつ水分摂取をこころがけてください。嘔吐が続く場合は、少量ずつ回数を多く摂取するようにしてください。
急場のみの使用とすることをおすすめしますが、自宅で作れる経口補水液のレシピ例を載せておきます。
塩2g(小さじ半分程度)、砂糖40g(大さじ4杯+小さじ1杯 )、水1 L 、味と香りづけでレモン汁など
*上記の例はカリウムなど市販の経口補水液に対して不足する成分もあります。短期間の使用としてください。また、作成したら早めに飲むことをおすすめします。
食事は短期間であれば、無理に食べなくても問題ありません。脱水症状になってしまうと、倦怠感が強くなる、口渇が目立つ、皮膚の張りがなくなるなどの症状が出現し、この場合は自宅での対応は危険です。特に高齢者や小児は脱水になりやすいため、注意してください。
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急性胃腸炎の診断をされた場合
いわゆる胃腸風邪であり、頻繁にみられる病気ですが、感染力の強い病原としてノロウイルスやロタウイルスがあり、これらはアルコールやせっけんでは消毒できないという特徴があります。
塩素系漂白剤が有効であり、対策として以下を参考にしてください(*保険上、ノロウイルスなどの検査対象は限定されており、また感染対策以外の治療は急性胃腸炎全般で同様であるため、具体的な病原の指摘がなくても同様の対策をしてください)
- 吐物や排泄物が付着した部位はペットボトルのキャップ1-2杯の漂白剤+水500mlで消毒。
- 感染者が触れた部位はペットボトルのキャップ2杯+水2500mlで消毒。
- 上記を使用する際には十分に換気してください。また金属は腐食するので消毒後に十分に水拭きをしてください。
- 色落ちする場合があるため衣類などは熱湯消毒してください。
病院や家来るドクターでできる治療
往診での対応をご依頼いただいた場合、上記のような病歴、診察所見に加えて超音波検査や心電図を追加することで必要な対応を決めます。内服での対応が可能であれば処方いたします。
緊急の治療が必要、または採血やX線、CTなどが必要になる場合は近隣の医療機関へ紹介させていただきます。翌日以降の受診が望ましいと思われる場合については順次、アドバイスさせていただきます。
まとめ
腹痛に関わる疾患は数多く、関連する臓器もあるため判断は難しいのが現実です。記載した内容だけでなく、気になる症状がある場合には、遠慮なくご相談ください。
監修:消化器内科医師 近藤
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参考文献
急性腹症診療ガイドライン2015(医学書院)