女性がなりやすい膀胱炎の原因や症状、知っておきたい予防法と治療について
投稿日: 2022年05月07日 | 更新日: 2024年08月03日
膀胱炎は女性の患者が多く、生活習慣に注意して予防することが大切です。
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目次
膀胱炎とはどんな病気?
排尿するときにしみるような痛みがある、下腹部が気持ち悪い感じがする、尿の回数が多くなってきた、などの症状が出現したような場合には、まず膀胱炎を疑います。
主な原因
膀胱炎は名前からも分かるように、尿をためる袋である膀胱に炎症が起こっていることを表していますが、原因は様々です。
もっとも多いのは大腸菌などの細菌が外部から尿道を逆に登ってきて膀胱に侵入し、膀胱の中で増殖し、炎症を引き起こすという細菌性の膀胱炎です。
細菌以外にも膀胱に炎症を起こす原因としては、薬剤、放射線治療などがありますが、はっきりとした原因がわかっていないものもあります。
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原因によってさまざまな種類がある
単純性膀胱炎(急性膀胱炎)
単純性膀胱炎は特に原因となる基礎疾患がない場合の細菌による膀胱炎のことを言います。
治療は膀胱炎の中では最も簡単であり、抗菌薬を5〜7日間内服することにより、ほとんどの場合治癒します。
複雑性膀胱炎
単純性膀胱炎と対比されるものが複雑性膀胱炎になりますが、排尿や尿路に関わる何らかの基礎疾患(神経因性膀胱、先天性尿路奇形、尿路結石、腫瘍、前立腺肥大症など)があり、それが原因となって起こったものを言います。
治療の方針は抗菌薬の内服が基本ですが、単純性膀胱炎とは異なり、治療に時間がかかる場合や抗菌薬のみでは完治させることができない場合が増えてきます。
また、原因となっている基礎疾患が何であるかによって抗菌薬以外の治療は変わってきます。
単純性膀胱炎だと思っていたら、頻繁に繰り返すため、腹部超音波検査やCT検査をしてみると実は基礎疾患が見つかり、複雑性膀胱炎であった、ということもあるので、治癒したはずなのに繰り返す場合には注意が必要です。
放射線性膀胱炎
放射線性膀胱炎は、子宮や前立腺などの骨盤内の悪性腫瘍に対して放射線治療を行ったことが原因となって起こるものです。
放射線によって膀胱の粘膜が虚血となり、血管内膜炎が進行性に生じることで、粘膜に潰瘍が起こり痛みや出血を引き起こします。
治療として、内視鏡下に膀胱粘膜の出血部位を電気凝固(経尿道的電気凝固術)する方法やミョウバン、硝酸銀などの膀胱内注入療法、高気圧酸素治療などを行なわれますが、基本的に治療が困難な膀胱炎です。
間質性膀胱炎
間質性膀胱炎は、これまで記載した膀胱炎とは異なり、原因不明のものです。
細菌性のものではなく、膀胱に慢性炎症が起こり、膀胱が萎縮を起こしてしまうものです。
原因ははっきりとしていないものの、膀胱の粘膜を覆っている細胞の機能障害や免疫系の異常が疑われています。
出血性膀胱炎
出血性膀胱炎は、出血を伴って発症する膀胱の炎症のことで、細菌、ウイルス、薬剤、放射線などが原因となります。
これまでに述べた単純性膀胱炎、複雑性膀胱炎、放射線性膀胱炎が悪化すると出血を起こすことがあり、そのような場合にも出血性膀胱炎になっていると言えます。
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膀胱炎の主な症状
膀胱炎になると、尿の回数が増える(頻尿)、排尿後もまだ残っている感じがする(残尿感)、排尿時に痛みがある(排尿痛)、尿が白く濁っている(尿混濁)、尿が赤い(血尿)などの症状が出現することがあります。
これらの症状は膀胱炎になると必ず全てが起こるというわけではないですが、一つでも当てはまるものがあれば、膀胱炎を疑った方が良いので理解しておきましょう。
頻尿
トイレが近い、尿の回数が多いという症状を頻尿と言います。
一般的には、朝起きてから就寝までの排尿回数が1回以上の場合を頻尿と言いますが、1日の排尿回数は人によって様々ですので、普段と比べて排尿回数が多いと感じる場合には頻尿と考えてもらって良いです。
膀胱炎によって頻尿となる原因は、膀胱の知覚神経が刺激され、尿意を感じやすくなっているためですので、尿の回数が増えるだけでなく、1回あたりの尿の量が少なくなることが多いです。
残尿感
排尿後も、尿が出きっていない感じ、尿が残っている感じがあるという症状を残尿感と言います。
実際に尿が残っていることもありますし、尿が残っていないのに残尿感があると感じることもあります。
膀胱炎では頻尿となる原因と同じく、尿意を感じやすくなっていることにより、残尿感が出現します。
排尿痛
排尿痛は、排尿する際に尿道や下腹部に起こる痛みのことで、疾患によっては排尿の最初に痛みが起こることもあれば、最後になって痛みが起こることもあります。
膀胱炎の場合には、排尿の最後にしみるような、ツンとする痛みを起こします。
尿混濁
尿混濁は、尿が濁っている状態のことですが、膀胱炎をはじめとする尿路感染症によって増加した白血球、尿酸塩またはリン酸塩でできた結晶、あるいは腟からの分泌物が排尿時に混入した場合などが原因として考えられます。
血尿
血尿とは、尿に血液が混じっている状態です。
トイレで確認できる肉眼的血尿と、見た目ではわからず検査をするとわかる顕微鏡的血尿があります。
膀胱炎の場合、肉眼的血尿以外にも症状を伴っていることが多いため、症状が血尿のみの場合には、尿路結石、尿路悪性腫瘍(膀胱癌、腎癌など)、腎炎などの可能性があります。
関連記事:尿漏れの原因は男性と女性で違う?予防になるトレーニング対策も紹介
なぜ女性が膀胱炎になりやすいのか
膀胱炎は女性に多いということはご存知かもしれませんが、なぜ女性は膀胱炎になりやすいのでしょうか。
膀胱炎のなりやすさの違いには男性と女性とで尿路の構造が異なっていることが影響しています。
幅広い年齢で発症するが、20・30代の女性が多い
一般的に膀胱炎と言われた場合、単純性膀胱炎(急性膀胱炎)のことを指しますが、どの年齢においても膀胱炎になることがあります。
特に多いのは20~30代の若い女性ですが、閉経前後の女性にも比較的多く見られます。
若い女性に多い理由として、疲労やストレス、月経、妊娠、性交渉などが考えられます。
外尿道口(尿の出口)が膣の前側の壁にあり、尿道が男性と比べて短い
先に述べた通りですが、膀胱炎は細菌が外部から尿道を逆に登ってきて膀胱に侵入し、膀胱の中で増殖し、炎症を引き起こすことによって起こります。
女性の場合、尿の出口が膣や肛門にとても近い位置にあるため、細菌が常にいる環境にさらされています。
また、男性に比べて女性は尿道が3〜4cmと短く、細菌が尿道を登ってきて膀胱に到達しやすいと考えられます。
膀胱炎を繰り返すこともある
女性は膀胱炎になりやすいため、たとえきちんと治療をしたとしても、何度も繰り返してしまうことがあります。
膀胱炎自体は細菌が侵入することにより起こりますが、膀胱炎が起こりやすい環境を改善することが大切になってきます。
後述するような日頃からできる予防法を参考にしていただき、繰り返さないよう注意していただければと思います。
男性の場合は稀で、前立腺炎や尿道炎の可能性の方が高い
これまで女性の話を中心にしてきましたが、男性は膀胱炎を起こすことはないのかという疑問を持たれる方がいらっしゃると思います。
男性の場合は同様の症状が出現した場合には膀胱炎というよりは前立腺炎や尿道炎の可能性が高いです。
前立腺炎が膀胱炎と異なる点としては、強い炎症であるため、高熱が出ます。
また、炎症が強い分、治療には2週間程度と膀胱炎よりも長い期間を要します。
尿道炎は淋菌・クラミジアをはじめとする性感染症のことが多く、きっかけとなる性行為があることがほとんどですので、判別するのは比較的容易です。
いずれも放っておくことは大変危険ですので、排尿時痛や違和感があれば、泌尿器科を受診していただければと思います。
関連記事:前立腺肥大は自然に治る?原因と症状、予防対策について解説
性行為は膀胱炎の原因になる?
性行為は膀胱炎の原因になることがあります。
特に女性は男性よりも尿道が短いため、性行為による運動により、会陰部に付着した細菌が尿道から膀胱内に侵入すると膀胱炎になることがあります。
予防のためには、性行為の前後にシャワーや排尿をすることでお互いが陰部を清潔に保つことが有効です。
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膀胱炎は自然治癒するのか
医療機関を受診された場合には、膀胱炎の診断となると、抗菌薬を処方されることがほとんどですが、軽い膀胱炎であれば、水分摂取をしっかりと行うことで治る場合があります。
しかし、実際には排尿時痛や頻尿などの症状が辛く、抗菌薬を使用した方が良いと考えられる場合が多いです。
症状が辛ければ、我慢せずに受診していただければと思います。
関連記事:カンジダ症ってどんな病気?女性に多い?男女別の症状や原因、治療について
病院での治療と日頃からできる予防法
これまで膀胱炎について説明してきましたが、実際に膀胱炎になってしまったら、どうすれば良いのでしょうか。
どこを受診したら良いのか、また治療や予防法について説明していきます。
症状を感じたら泌尿器科または内科へ
膀胱炎かなと感じる症状が出現した場合には、様子を見ていたら改善するかもしれないと我慢をするのではなく、まずは泌尿器科もしくは内科を受診してください。
水分摂取や市販薬(漢方薬)でも症状が改善することはあり得ますが、膀胱炎の治療の基本は抗菌薬になります。
抗菌薬は近くの薬局などでは購入できず、医師による診察・処方が必要となります。
尿検査を行い、抗菌薬などで治療
泌尿器科や内科を受診された際には、まず尿検査を行います。
尿を採取する場合、尿の出口を消毒した後、最初に排出された尿(初尿)を捨て、途中の尿(中間尿)を採取します。
これは初尿には膣のおりものなどが混入しやすいからです。
尿検査の結果、一定数以上の白血球や細菌が見つかれば膀胱炎と診断できます。
また尿中の細菌を培養して菌の種類を調べることも大切です。
治療は基本的に抗菌薬を5〜7日間内服することで完了しますが、症状が改善しても処方された薬は全て飲みきってください。
途中で内服をやめてしまうと、治りきっておらず、再燃してしまうことがあります。
治っているかどうかの確認も大切
膀胱炎はほとんどの場合が1週間で治癒するものの、治療がなかなか上手くいかないこともあります。
また、症状が消えていても、尿検査の結果を見ると、まだ治りきっていないと判断される場合があり、放っておくとしばらくしてから再燃してしまうこともあります。
1週間後に受診を指示されることが多いと思いますが、治っているかどうか確認することは大切ですので、必ず受診するようにしてください。
治りきっていない場合にはもう1週間内服を継続する場合や抗菌薬の種類を変更する場合もあります。
日頃からできる予防
水分を多くとる
膀胱炎を予防する方法として、水分摂取量を増やすことが推奨されていますが、目安としては1.5L以上と言われています。
水分不足になると尿の量が減るため、細菌が膀胱内で繁殖しやすくなります。
水分摂取により尿の量が増えることで、膀胱を洗い流し、細菌が膀胱内で繁殖しにくい環境を整えることができます。
これまでに何度か膀胱炎になったことがある方は水分摂取量を増やしていただくと良いです。
尿を我慢しない
お仕事の都合上、長時間にトイレに行くことが難しいという方がいらっしゃるかと思います。
排尿を長時間我慢してしまうことで、膀胱内に尿が溜まった状態が続き、細菌が膀胱内で繁殖しやすくなってしまいます。
職場の環境は様々ですし、調整が難しい場合もあるかもしれませんが、膀胱炎を繰り返してしまう場合には職場とご相談いただくのが良いでしょう。
性行為前後にシャワーや排尿で清潔にする
性行為は運動によって陰部の細菌を尿道内に押し込んでしまうことがあります。
そのため、性行為の前にシャワーなどで陰部を清潔にしておくことが大切です。
また、性行為の後にもシャワーなどで陰部を清潔にし、排尿することで尿道や膀胱内の細菌を流してしまうことも大切です。
便はトイレットペーパーで前から拭く
排便後には肛門や周囲には細菌が付着してしまいます。
トイレットペーパーで拭く際には、後ろから前へ拭いてしまうと、肛門から尿道に細菌を移動してしまうことになるため、尿道に細菌が入りやすくなってしまいます。日頃から前から後ろへ拭くように心がけましょう。
日頃からストレスや疲れを溜め込まない
膀胱炎は細菌が原因で起こる感染症ですので、身体の免疫力を保つことは大切です。
ストレスや疲れは身体の免疫力を低下させてしまう原因になりますので、日頃からストレスや疲れを溜め込まないように心がけましょう。
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病院や家来るドクターでできる治療
西春内科在宅クリニックには、内科診察・採血検査・尿検査・超音波検査が可能であり、膀胱炎の診断・治療が可能です。
頻尿、排尿時痛など膀胱炎を疑う症状があれば、受診を検討していただければと思います。
もし内科で対応困難な状態と判断された場合には、診療可能な泌尿器科のある病院をご紹介させていただきます。
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まとめ
膀胱炎は女性に多い病気ですが、適切な治療を行うことで比較的早期に治すことができます。
頻尿、排尿時痛など膀胱炎を疑う症状があれば、我慢せずに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
また、膀胱炎になってしまった場合には繰り返さないような生活習慣の改善にも取り組んでいただければと思います。
参考文献:JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015―尿路感染症・男性性器感染症―
執筆者
専門領域
泌尿器科一般
認定・資格
泌尿器科専門医(日本泌尿器科学会)
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