エムポックス(旧サル痘)とは?原因・症状・ワクチン・治療などについて解説

公開日:2022.8.2 更新日:2026.9.11

「エムポックス(mpox)」をご存じですか?以前は「サル痘」と呼ばれていた感染症で、2022年に世界的に流行し、日本でも同年7月に初めて患者が報告されました。

世界保健機関(WHO)は2022年7月に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言し(2023年5月に終了)、2024年8月にはアフリカでの別系統(クレードIb)の流行を受けて再び緊急事態を宣言しました。日本国内では2022年の流行以降、累計で約250例の患者が報告されています。

患者には首都圏の在住者が多く報告されており、最近では首都圏以外の地域でも報告をされています。

今回はこのエムポックスとは何かについて詳しく解説します。

この記事は次のような方に向けて書いています

  • エムポックス(旧サル痘)がどんな感染症か知りたい
  • 感染経路と症状を知りたい
  • ワクチンや治療について知りたい

エムポックスウイルスとは

エムポックスウイルスの電子顕微鏡写真

エムポックスウイルスの電子顕微鏡写真

(参照:NIID 国立感染症研究所「エムポックスとは」)

エムポックス(mpox)は、ウイルス性の人獣共通感染症(動物からヒトに感染するウイルス)で天然痘と同じオルソポックスウイルスの仲間です。

天然痘とは感染してから約2週間後に、39℃以上の高熱・倦怠感・頭痛・嘔吐などの全身症状が現れます。

また、解熱し3〜4日後に顔や四肢を中心に強い痛みや灼熱感を伴う斑状の皮疹が現れるのが特徴です。

しかし、天然痘は根絶が確認されていますので、現在ではエムポックスが最も重要なオルソポックスウイルスといわれています。

エムポックスは、自然界では、リス・ネズミ・ヤマネ・霊長類(サルなど)が保有している可能性があることがわかっています。

エムポックスに感染した動物の肉などの動物性食品を十分に調理せず食べることがヒトへの感染の原因です。

ヒトへの感染は、1970年にアフリカのコンゴ民主共和国で初めて確認され、その後は中央〜西アフリカでたびたび感染が確認されています。

アフリカ以外では2003年にアメリカで70人以上の感染を起こしたほか、2018年以降もアメリカ、イギリス、イスラエル、シンガポールなどの国で感染が確認されてきました。

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エムポックスは欧米を中心に感染者数が増えている?

エムポックスは欧米を中心に感染者数が増えています。

今回のエムポックスの感染増加について調査された大きな研究が2つありますのでご紹介しながら、欧米を中心に起こる感染者の増加について説明していきます。

エムポックスの研究において、感染者は合計で725人(数人重複)が確認されています。

感染者の背景で特徴とされているものは、以下の通りです。

  • 年齢中央値は38歳
  • 感染者はほぼすべてが男性(1人のみトランスジェンダー、女性は無し)
  • 99%(715人)がゲイ、バイセクシャルなどの男性間性行為者
  • 40%(288人)がHIV感染を併発している

男性間性交渉に始まり、男女間での性交渉で女性にも広がり始めたことで大きな感染の波になってしまったのではないかと考えられています。

日本におけるエムポックスの感染者数の推移

2022年5月以降、欧州や米国など、これまで流行がみられなかった複数の国で、渡航歴もなくエムポックス患者との疫学的な関連が不明な患者が確認されています

日本国内においては、2022年7月25日に、1例目のエムポックス患者発生が報告されました。

その後、患者数は東京都を中心に徐々に増加し、厚生労働省の発表によれば2023年2月2日時点までに報告された感染者数は合計18名です。

全員が男性で、20代が2名、30代が10名、40代が5名、60代が1名でした。

渡航歴のある方は4名(欧州3名、北中米1名)で、1名は在日米軍関係者の方、残りの13名は渡航歴のない方でした。

国内の報告は2023年8月をピークに減少していますが、その後も散発的に続いています。

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エムポックスの症状や感染力について

では、エムポックスはどこから感染するのか、どんな症状が出たらエムポックスを考えるべきなのか、どうしたらエムポックスにかからないのかについても詳しく説明していきます。

エムポックスの原因や感染経路

エムポックスのヒトへの感染経路は、「ヒトからヒトへの感染」と「動物からヒト」への感染の2つが存在します。

「ヒトーヒト感染」は以下のような状況で起こるとされています。

  • 発疹、かさぶた、滲出液との直接接触
  • 感染者の発疹や体液に触れたシーツやタオル、衣類に触れること
  • キス、ハグ、セックス(オーラルセックス、アナルセックスを含む)などの接触
  • 長時間(数時間)の対面での会話、接触
  • 胎盤を介しての胎児への感染

また、精液や膣分泌液を介して広がることは確認されていません。

コロナウイルスのようなエアロゾルによる感染を起こすこともないと考えられています。

一方で、「動物―ヒト感染」は以下のことをすることで感染します。

  • 感染した動物の肉や製品を食べる
  • 感染した動物に引っ掻かれたり噛まれたする

輸入した動物が感染していた場合には、一緒に飼育されていた動物には感染が広がる可能性があります。

感染した動物をペットとして飼育した場合には「ペットからヒトへ感染」する場合があります。

エムポックスの症状

エムポックスの症状としては、ニキビや水ぶくれのような発疹が全身に出ることが特徴的です。

特に他の発疹が出にくい手のひらや足のうらにも出現します。

エムポックスの潜伏期間は 5〜24日とされています。

また、エムポックスはその他感染に伴うさまざまな症状を呈します。

エムポックスによる症状は以下の通りです。

  • 発疹→陰部(73%)、体幹手足(55%)、顔(25%)、手掌足底(10%)
  • 発熱
  • リンパ節腫脹→頸部(85%)、鼠径部(20%)、わき(1%)
  • 粘膜病変→陰部(71%)、口腔内(30%)、目鼻(1%)
  • 疲労感
  • 筋肉痛
  • 頭痛
  • 咽頭痛
  • 直腸肛門炎・痛
  • 倦怠感

エムポックスの症状と発生率をグラフにすると以下の通りです。

エムポックスの症状と発生率を示したグラフ

また、発疹は感染初期から徐々に形態を変えて進行していきます。

エムポックスの発疹が感染初期から形を変えて進行していく経過の写真

発疹の形態の期間とその経過

(参照:CDC「Clinical Recognition」)

エムポックスの重症化リスク

エムポックスはときに重症化することがわかっています。

エムポックスが重症化した場合、

  • 脳炎
  • 二次皮膚感染
  • 肺炎
  • 眼病(視力低下)

などが引き起こされます。

エムポックスの重症化の高リスクとなるのは、以下のような方となります。

  • 免疫不全の人(HIV、血液がん、抗がん剤治療中、など)
  • 小児(特に8歳以下)
  • アトピー性皮膚炎
  • 妊娠、授乳中

今回のエムポックスの流行で、アフリカやインド、スペインなどで死者が発生したとのニュースもありますが、致死率は3〜6%程度とされています。

エムポックスの致死率

エムポックスウイルスは、コンゴ盆地型(クレードⅠ)と西アフリカ型(ⅡaおよびⅡb)の2系統が確認されています。

従来の報告では、コンゴ盆地型による感染例の死亡率は10%程度であるのに対し、西アフリカ型による感染例の死亡例は1%程度とされています。

2022年1月1日から2023年1月15日までに、WHO管轄である全6地域の110か国・地域から報告された累積感染者数は84,733人、累積死亡者数は80人です。

今回の流行では、これまでの報告よりも致死率は低い可能性が示唆されます。

2022年以降の流行は西アフリカ型によるものですが、従来の流行で報告されてきた症状とは違う点もみられています。

今回の流行では、男性間の性交渉を行う者での感染事例が多く報告されています。

しかし女性の症例も報告されており、性別によってエムポックスの可能性を除外できるわけではありません。

また、

  • 異なる段階の皮疹が同時にみられる
  • 発熱やリンパ節腫脹などの全身症状がなく会陰部や肛門周辺の皮疹のみで発症する
  • 肛門痛、排便時の痛みや下血など直腸炎症状がみられる

といった症状も報告されています。

エムポックスになったときの後遺症について

エムポックスは発症から2〜4週間で自然によくなることがほとんどです。

しかし、時に皮膚の二次感染、気管支肺炎、敗血症、脳炎、角膜炎などの合併症を引き起こすことがあります。

皮膚に痕が残る、合併症による後遺症(脳炎後のてんかんや角膜炎後の視力障害など)が起きる可能性はあります。

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エムポックスと天然痘の違いは?

エムポックスは天然痘と症状はよく似ていますが、エムポックスは天然痘よりも感染力が弱く、重症化する可能性も非常に低い病気ということが知られています。

また、エムポックスと天然痘は共にオルソポックスウイルス属に属するウイルスによって引き起こされる病気ですが、天然痘は1980年に根絶が宣言されています。

エムポックスは性感染症と似た症状が出る?

エムポックスは、発症初期にみられる発熱・陰部の皮疹や粘膜病変などの症状は性感染症、特に梅毒とよく似ている場合があります。

また、一部のエムポックス患者にはHIVだけでなく、淋菌・クラミジア・ヘルペスウイルスなどの性感染症に同時に感染していることがわかっています。

そのため、合併している性感染症に伴う症状が出る可能性もあります。

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 エムポックスの予防法は?

エムポックスの予防法としては、天然痘ワクチンの接種があります。

天然痘ワクチンには約85%の猿等予防効果があることがわかっています。

現在、天然痘ワクチンは国家備蓄されている状況で、厚生労働省は7月29日にエムポックスワクチンとして承認しました。

1976年まで天然痘ワクチンは接種を実施していましたので、40代後半以上の方は接種歴があると思います。

接種歴がある方はもしかしたらエムポックスへの免疫が残っている可能性があります。

また、ワクチン以外での私生活での予防法としては以下のものがあります。

  • エムポックス感染者・疑い患者や、その使用物に接触しない
  • 石鹸あるいはアルコール消毒を行う
  • アフリカでは動物(げっ歯類、霊長類)との接触を避ける

エムポックスの病院での検査や治療・治療薬は?

エムポックスの確定診断は、皮膚病変を採取しPCR検査を行なってウイルスのDNAを確認することで診断します。

コロナウイルスで多く用いられている抗原・抗体検査はエムポックスの検査として推奨されておりませんので、間違った情報に惑わされないように注意が必要です。

現在、エムポックスに対する治療薬はありませんが、天然痘に対する抗ウイルス薬である「テコビリマット(TPOXX)」が有効と言われています。

アメリカの製薬会社が天然痘の治療薬として開発したオレンジ色のカプセル型の飲み薬です。

すでにアメリカやヨーロッパではエムポックスの抗ウイルス薬として承認されています。

しかしながら、日本では臨床研究での投与を検討している段階ですので、一般的に使用することは残念ながらできません。

つまり、現在国内で使用できる治療薬はないということです。

また、もし感染が発覚してしまった場合は次のようにして過ごしましょう。

  • 発疹のすべての部分を衣服、手袋、包帯などで覆う
  • 発疹とその他すべての症状がおさまるまで、マスクを着用する
  • 身につけたり、扱ったりしたものは絶対に共有しない
  • 他人との性的接触、身体的接触を避ける
  • 人混みや集会を避ける
  • 発疹に触れた後は石鹸でしっかりと手を洗うか、アルコール消毒を使用する

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まとめ

エムポックスについて理解いただけましたでしょうか。

男性に多く、また感染者も特徴的であることはわかったと思います。

エムポックスは性感染症ではありません。

また、エムポックス患者=ゲイ、バイセクシャルというわけでもありません。

誰にでもかかりうる感染症になってきていると考えられます。

現在、日本ではエムポックスの患者数も減少してきています。

しかし、欧米のように数千人あるいは数万人の感染者が出る可能性もあります。

患者が触れた場所に触れると間接的に感染リスクがあるため、アルコール消毒などが対策として有効となるしょう。

今後の動向に注目して新たな情報が出た際は、再度記事を書かせていただきます。

FAQ

エムポックスについてよくある質問

エムポックスはどんな症状が出ますか?
ニキビや水ぶくれのような発疹が全身に出るのが特徴で、手のひらや足のうらにも出現します。発熱、リンパ節の腫れ、粘膜病変、疲労感や頭痛などを伴うこともあります。潜伏期間は5〜24日とされています。
エムポックスはどうやってうつりますか?
発疹やかさぶた・滲出液との直接接触、感染者の体液が付いたシーツやタオル、キス・ハグ・性行為などの接触、長時間の対面での会話などでうつります。コロナのようなエアロゾル感染はないと考えられています。
エムポックスは重症化しますか?
発症から2〜4週間で自然によくなることがほとんどですが、免疫不全の方、8歳以下の小児、アトピー性皮膚炎、妊娠・授乳中の方は重症化リスクが高く、脳炎や肺炎などを引き起こすことがあります。

【おまけ】根絶された病気「天然痘」のワクチンが存在する理由とは

天然痘は根絶されたはずなのになぜかワクチンは世界中の国々が確保しています。

なぜだと思いますか?

それは、「バイオテロ対策」です。

バイオテロとは、人に害を及ぼすウイルス、細菌、真菌などの病原体およびその産生する毒素を用いて無差別に大量殺人をしようとする行為です。

天然痘は感染力と致死率が非常に高く、致死率は20〜50%もあるとされています。

1980年に地球上で初めて人類が根絶させた感染症なのですが、政府レベルの実験室では天然痘はいまだ保管されています。

このように致死率が高いウイルスが実験室から流出してしまった場合やバイオテロに用いられた場合、世界中でパンデミックになることは予想がついていました。

そのための対策として各国は天然痘ワクチンを製造、備蓄しているのです。

天然痘ワクチンの再接種が必要となるかはまだわかりません。

今後、欧米では感染ハイリスクな人々への接種が進んでいくと思われます。

天然痘ワクチンはコロナワクチンと違い、古くから使用されており安全性は担保されています。

必要となった場合は、天然痘ワクチンの接種することをおすすめします。

参考資料

・WHO(世界保健機関)

ttps://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/monkeypox

・厚生労働省:

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.html

・CDC(アメリカ疾病予防管理センター)

https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/index.html

・Monkeypox Virus Infection in Humans across 16 Countries — April–June 2022

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2207323

・Clinical features and novel presentations of human monkeypox in a central London centre during the 2022 outbreak: descriptive case series

https://www.bmj.com/content/378/bmj-2022-072410

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