カンピロバクター感染症とは|潜伏期間や症状について解説
投稿日: 2024年05月14日 | 更新日: 2024年08月07日
ある日突然の腹痛、嘔吐、下痢…思い返してみれば少し前に食べた鶏肉が生焼けだったような…なんてことありませんか?
それはもしかしたら『カンピロバクター』が原因かもしれません。
「カンピロバクター」という名前を皆様一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
カンピロバクターは一般家庭の食卓に出てくる牛や豚、鶏などの身近な食品からの感染が多いです。
そんなカンピロバクター感染症について、症状や予防策など詳しくご説明していきたいと思います。
目次
カンピロバクターとは?
カンピロバクターは食中毒発生件数の中で上位を占める食中毒菌です。
流行時期は5月~7月の比較的暖かい時期、そして10月前後の行楽シーズンに流行しております。
一般的には軽い症状ですが、お子様や高齢者、免疫力の弱い人などでは命にかかわる場合もあるので注意が必要です。
他の菌に比べ少量の菌数でも食中毒を引き起こします。
カンピロバクターの症状
主な症状は下記の通りになります。
- 下痢(しばしば血便を伴う)
- 腹痛と腹部のけいれん
- 発熱(38℃以下が多い)
- 吐き気
- 嘔吐
- 倦怠感
- 頭痛
発熱の症状が先に出て、後になって下痢症状が出るケースや、発熱はなく下痢症状のみのケースなど人によって異なります。
多くの場合は1週間ほどで改善していき、命にかかわることは稀です。
しかし、小さいお子様や、高齢者、免疫力が下がっている方などは重症化する場合もあるので注意が必要です!
また、カンピロバクター感染症をきっかけに起こりうる病気として、「ギランバレー症候群」というものがあります。
発症率は日本国内で10万人に1~2人ほどです。
カンピロバクター感染後、数週間後手足のしびれや脱力感を発症し、徐々に力が入らなくなっていきます。
一般的には1か月ほどで症状のピークを迎え、その後少しずつ回復に向かっていきます。
カンピロバクターの潜伏期間は?
カンピロバクターの潜伏期間(感染から症状が出るまでの期間)はおよそ2日~10日と長いことが特徴です。
ですので、症状が出た時には原因となる食べ物がわからない、といったこともあります。
カンピロバクターの感染経路
主な感染経路は2つあり、1つは牛や豚、鶏肉などの食品から感染する「食中毒」。
もう1つは感染者やペットのふん便からの「感染症」があります。
食中毒経路
・汚染された食品の生食、あるいは加熱が不十分なものを食べた場合
少量の菌でも発症するため、鮮度とは関係ありません。
【原因となるもの】鶏の刺身、生レバー、井戸水など
・汚染された調理器具や手指を介して、二次的に汚染された食品を食べた場合
【原因となるもの】まな板、包丁、トング、布巾、スポンジなど
感染症経路
カンピロバクターの感染経路は下記のようになっています。
- 患者のふん便処理後、手洗いや消毒が不十分で、汚染された手指を介して感染する場合
- 汚染されたドアノブやテーブルなど介して間接的に感染する場合
- ペットに触れ合うことで手指が汚染され、感染する場合(ペットは症状が無くても腸内に保菌していることもあります)
カンピロバクターの予防策
カンピロバクターを予防するために次のことを注意しましょう。
食中毒対策
・肉類を生で食べることは避け、十分に加熱しましょう(75℃で1分以上)。
特に鶏肉は中まで火が通っているか確認しましょう。
・生肉を扱った後は、手洗い・消毒をしましょう。
・肉と他の食材は調理器具や容器を分けて処理・保存をしましょう。
・生肉に触れた調理器具はよく洗い、熱湯や次亜塩素酸ナトリウム、消毒用エタノールなどで消毒しましょう。
感染症対策
・料理の前や排便後、ペットに触った後は手洗い・消毒をしましょう。
特に赤ちゃんのおむつ交換の後なども必ず手洗い・消毒を行いましょう。
・トイレ内、特に水洗レバーや便座、ドアノブなど触る所はこまめに消毒しましょう。
カンピロバクターは様々な消毒剤に対する抵抗性が弱い細菌です。
消毒用エタノールをはじめ、次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨード、など市販されているほとんどの消毒剤が有効です。
カンピロバクターはうつる?
カンピロバクターは人から人へ感染することはほとんどありません。
乾燥に弱く、空気中に長く生存することが出来ない為です。
ただし、便や嘔吐物を介して感染することがあるので、看病をする際は便や嘔吐物を直接触らないようにし、手袋を着用しましょう。
カンピロバクターに感染したときの治療
多くの場合は特別な治療は必要としませんが、下痢と発熱による脱水には最も注意が必要です。
そのため経口補水液やスポーツドリンクなどでこまめな水分補給を行いましょう。
また、お食事は症状が安定するまで極力控えめにし、消化の良いおかゆなどを中心に摂りましょう。
しかし、患者の状態次第では病院で以下の治療を行う場合があります。
病院で受けられる治療
脱水が強い場合、口から水分が摂れない時は点滴を行います。
また、重症の場合は抗生物質の処方が必要な事もあります。
下痢止めのお薬は、菌の排出を遅らせてしまうため、基本的には使用しません。
カンピロバクターは治るまで何日かかる?
カンピロバクター感染症をすぐに治す方法はありません。
食事療法、対症療法を行い、細菌が排出されることを待ち、およそ1週間でほとんどの方は症状が改善します。
カンピロバクター感染時に処方される薬は?
症状が強い場合は消化を助けるお薬や、腸内環境を回復するための整腸剤が処方されます。
また高熱や出血を伴う下痢がある重症の場合はアジスロマイシンなどの抗生物質を処方されることもあります。
急な腹痛・下痢・嘔吐は家来るドクターまで!
家来るドクターでは、夜間休日の救急往診を行っています。
往診では整腸剤の処方や、緊急性の判断、点滴のご準備がございます。
ご相談もできますので、ご心配な方はお気軽にご相談ください。
【まとめ】カンピロバクターは日頃からの衛生管理で対策しよう
カンピロバクターによる食中毒は、十分な加熱と二次汚染の防止や消毒を徹底することで防ぐことが出来ます。
特にお肉を調理する際は、こちらに気を付け食中毒を防ぎましょう。
また、普段から手洗いうがいをしっかり行い、衛生的に保つことも大切です。
参考文献
- NIID 国立感染症研究所 カンピロバクター感染症とは
- 厚生労働省検疫所FORTH カンピロバクター感染症
- 健栄製薬カンピロバクター感染症
- 病気スコープ カンピロバクター食中毒は人からうつる?予防法や潜伏期間について
- EPARKくすりの窓口コラム カンピロバクター食中毒の基礎知識と治療に用いられるお薬
執筆者
西春内科・在宅クリニック 院長 福井 康大