いんきんたむし(股部白癬)はうつるのか?原因や湿疹との見分け方について解説
投稿日: 2022年08月18日 | 更新日: 2024年08月05日
陰部や太もものかゆみはを感じたことはありますか。
もしかするとその痒みは“いんきんたむし”かもしれません。
いんきんたむし(股部白癬:こぶはくせん)とは、白癬菌(はくせんきん)というカビの一種が原因で起こる皮膚の感染症です。
この原因の白癬菌(はくせんきん)は、いわゆる”カビ”と同じように、高温多湿の環境を好みます。
そのため、皮膚の衛生状態が悪かったり、股のところが赤かったり痒かったりするのは、いんきんたむしが原因かもしれません。
今回はそんないんきんたむしについて詳しく解説します。
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目次
いんきんたむし(股部白癬)になる原因
いんきんたむしの原因である白癬菌というカビの一種は、ケラチンと呼ばれる皮膚の角質のタンパク質を栄養源としています。
白癬菌が発生する箇所によって名称は異なっています。
- 股の箇所で感染症を起こせばいんきんたむし(股部白癬)
- 足で起こせば水虫(足白癬)
- 爪で起こせば爪水虫(爪白癬)
と呼ばれます。
いんきんたむしになる原因は、本人に水虫があったり、家族や職場の同僚など身近な人に水虫があったりすると移ることがあります。
また、水虫を触ったその手で股を触ったり、同じタオルや足拭きマットを使用すると移る可能性が高いです。
股は通気性が悪いことや入浴の際に洗い足りないことが多いことから、カビにとっては増殖しやすい環境となっています。
特に汗をかきやすく蒸れやすい夏場にいんきんたむしになる方が多いので注意しましょう。
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いんきんたむし(股部白癬)の感染経路は?人にうつる?
いんきんたむしの感染経路は主に以下の原因が考えられます。
- 水虫やいんきんたむしに罹患している人と直接接触した
- 同じタオルなどの衣類を共有
- いんきんたむしに感染している犬や猫を触る
このようなことでいんきんたむしに感染する可能性があります。
とくに男性の場合は太ももが陰嚢と接触するため通気性が悪く蒸れやすいので、白癬菌が増殖しやすい環境となりやすいです。
他人と接触する格闘技や、性行為などで感染することももちろんあります。
ただ、接触したからすぐにいんきんたむしの症状が出ることはありません。
白癬菌が皮膚で増殖し感染をおこすまでにおよそ24時間かかると言われているので、早い段階で体を洗い流し、皮膚を清潔に保つことで感染する心配はないと考えられています。
また、白癬菌はヒトだけでなく、犬や猫に感染していることもあります。
感染している犬や猫を触った後、洗い流さずにいると発症してしまう可能性がありますが、どの犬や猫に白癬菌が潜んでいるかは分かりません。
さらに、基礎疾患に糖尿病がある方は白癬菌に感染するリスクも上がると言われています。
糖尿病をお持ちの方で
- 陰部がかゆい
- 足に赤みがある
- 皮がむけてる
などの症状があれば病院受診を考慮してみてください。
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いんきんたむし(股部白癬)の症状・部位
いんきんたむしに感染すると、股周辺に円形の赤い発疹や膿が出るような水ぶくれができ、徐々に拡大していきます。
特徴としては、輪を描いたように、発疹の縁のところが赤く盛り上がり、輪の内側は赤くなく普通の皮膚のように見えることです。
これは、白癬菌が栄養源であるケラチンを求めて、円を描くように周りに増殖していくために起こる特徴です(必ずしも特徴的な発疹が出るとは限りません)。
太ももの内側など皮膚が擦れやすい部位に発症することが多いですが、性器周辺やおしりの方にまで広がることもあります。
症状としては、かゆみが一番の特徴ですが、1日中かゆみを自覚する人もいれば、汗をかいたときや夜だけかゆみを感じる人もいます。
また、痛みを感じることもあります。
しかし、いんきんたむしになったからといって特徴的なにおいはありません。
もちろん、股のところにじゅくじゅくしたような傷が出来たりすれば少し臭気が漂うこともあるでしょうが、「いんきんたむし=くさい」というような1対1対応ではありません。
関連記事:毛じらみの原因や症状、肉眼での見つけ方などについて解説!放置すると危険?
いんきんたむし(股部白癬)と湿疹の見分け方
正直、見た目で見分けるのはなかなか難しいです。
典型的な見た目であれば、「おそらくいんきんたむしだろう」と分かりますが、確定するには皮膚の擦過物を採取して顕微鏡で実際に白癬菌がいるかどうかを確認することが必要となります。
医師が顕微鏡を見て、白癬菌がいればいんきんたむし、いなければ湿疹や他の病気を疑って治療方針を考えることになります。
※顕微鏡の検査は5分前後で可能な簡単な検査です。
ただ、いんきんたむしは基本的には陰茎や陰嚢には発症しないと言われているので、「陰茎や陰嚢の赤みについてはいんきんたむしでは無さそう」と考えられています。
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いんきんたむし(股部白癬)は放置していい?自然治癒はする?
先程記載したとおり、白癬菌は24時間ほどで皮膚に侵入し、感染を起こします。
洗い流さずに放置しているといんきんたむしを発症してしまうので、手洗いや1日1回の入浴は忘れずに行いましょう。
いんきんたむしになってしまった場合、基本的には放置していては治りません。
感染して早い段階であれば、しっかりと皮膚の衛生状態を保つことで塗り薬など無しで治癒される人も稀にいますが、基本は抗真菌薬(カビをやっつける薬)を外用して治療していきます。
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いんきんたむし(股部白癬)の治療法は?
いんきんたむしは抗真菌薬の外用が基本的な治療になります。
確定診断に必要な顕微鏡の検査を病院受診して行い、治療を進めていきましょう。
専門は皮膚科であり、顕微鏡の検査の結果からいんきんたむしではなかった場合、湿疹や他の皮膚の病気を疑って検査、治療を進めていくことになります。
いんきんたむしの病院での治療について
いんきんたむしの治療は、抗真菌薬の外用薬が基本になります。
薬を直接患部に塗ることで、皮膚に侵食し増殖している白癬菌を死滅させることが目的です。
また、いんきんたむしと診断された人は、同時に水虫(足白癬)を併発していることもあるので、水虫の治療も並行して行われることがあります。
水虫の治療も同様に抗真菌薬の外用ですが、なかなか治らなかったり、爪白癬もあったりする場合は、抗真菌薬の内服で治療を行うこともあります。
治療期間としては、1日1回の外用を、2週間ほど継続します。水虫を併発している場合は1ヶ月程度塗り続けることも必要と言われていますので、どちらにせよ根気強く継続することが大切です。
いんきんたむしにオロナイン等の市販薬は効く?
「オロナインH軟膏」は、昔から皮膚の赤みや傷などに使われてきた常備薬として有名で、主成分は”クロルヘキシジングルコン酸塩”という消毒に使われるものになります。
オロナインの効能効果に水虫やたむしと記載がある通り、白癬菌への一定の効果は認められています。
ただ、やはり1番は抗真菌薬の外用が効果を発揮するので、オロナインでの完治は難しいと考えた方が良いでしょう。
市販薬でもダマリングランデクリームや、ラミシールDXなど抗真菌薬は販売されています。
これらの薬はしっかり治療効果が期待されますが、顕微鏡での検査をしていない状況だと、たむしと診断がついてないのに薬を塗ることになります。
薬を塗って改善したのか、その他の要因(皮膚衛生状態の改善や生活習慣の変化など)で改善したのか判然としないこととなってしまいます。
なので、疑わしい場合は病院できちんと検査するようにしましょう。
いんきんたむしの完治や再発率は?
いんきんたむしは塗り薬を2週間程度継続すれば治るとされています。
しかし、いんきんたむしになった原因(本人が水虫ももっている、同居の家族に治療が済んでいない水虫の人がいる、など)が解決していない場合、もちろん再発の可能性が高いということになります。
いんきんたむしになった原因がはっきりすれば、そちらの解決も同時に進めるのが良いでしょう。
いんきんたむしによる痒みがひどく、掻きむしってしまった場合、皮膚の黒ずみなどが出てくることもあります。
適切に治療を行い、掻くことが減ってくればいんきんたむしによる黒ずみも皮膚のターンオーバーとともに改善します。
治療期間は、根気強く外用薬を継続、引っ掻くことで皮膚に摩擦を与えないように注意しましょう。
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日頃からできるいんきんたむし(股部白癬)の予防法
いんきんたむしの予防としては、皮膚を清潔に保つことが1番大切です。
具体的には、1日1回程度の入浴またはシャワー浴で患部や全身を丁寧に洗うことです。
ただし、ナイロンタオルなどでごしごし洗いすぎるのも皮膚を傷つけてしまうため、必要以上にこすったり繰り返し洗う必要はありません。
また、人から人へ感染するので、以下のようなことが有効です。
- 共同のタオルを使用することを控える
- 足ふきマットや衣類はこまめに取り換える
- トイレのスリッパなどは共用しない
- 洗濯できないものについては雑巾で水拭きし、しっかりと乾燥させる
また、たむしの原因にもなる水虫にならないために、銭湯やサウナなど大勢の人が利用する浴場でも注意するといいでしょう。
足ふきマットなどはどうしても共同のものを使うことになるので、入浴後にはきちんと水気を拭き取り、十分足を乾かしてから靴や靴下を履くことをおすすめします。
夏場の汗をかきやすく蒸れやすい時期にかかりやすいので、特に夏場は注意するようにしましょう。
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病院や家来るドクター(往診)で行ういんきんたむし(股部白癬)の治療
病院受診することで自己負担少なくいんきんたむしの治療を行うことが可能になります。
いんきんたむしも水虫も、確定診断するためには顕微鏡の検査が必須です。
確定診断のあと、抗真菌薬の塗り薬をしばらく継続することで症状も改善してくると思います。
ただ、全例で顕微鏡の検査を経て確定診断をした後に治療開始をするというわけにはいかないのも現実です。
在宅医療の現場であったり、病院やクリニックによっては器具が揃っていなかったりすることもあるので、その場合は症状や所見と併せて治療開始することもあります。
その際は症状の経過を見ていき、抗真菌薬の外用で症状が改善していればそのまま継続、改善しなければ違う種類の外用薬に変更することもあります。
直接的に命に関わるような病気ではありませんが、痒み、皮膚の赤みなどのようにQOLに関わる疾患なので、早めに治療を始めることができると良いかもしれません。
家来るドクターでは、いんきんたむしに関するご相談も可能です。
ご心配な方はお気軽にご相談ください。
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まとめ
いんきんたむしはありふれた病気の1つで、主な症状は陰部のかゆみです。
白癬菌というカビが皮膚に侵入・増殖して起こる感染症で、塗り薬での治療が基本になります。
治療と同時に、いんきんたむしになってしまった原因を探し、原因を絶つこと、日常生活で家族を含む身の回りの人に移さない、移されないことが重要になります。
もし思い当たる症状があるかたはお気軽にご相談ください。
参考文献
・あたらしい皮膚科学 第3版
・日本皮膚科学会ホームページ
・日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019