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急性扁桃炎の症状や早く治す方法を解説|急性咽頭炎との違いは?

急性扁桃炎

 

のどの痛みはとても辛い症状ですよね。

 

またのどの痛みから食事が取れないことで脱水を起こし、さらに症状を悪化させることもあります。

 

のどの痛みを起こす病気は多数存在し、中には重症化すると命に関わることがあります。

 

今回はそんなのどの痛みが起こる原因や、症状、治し方などについて詳しく解説していきます。

 

のどの痛みでお困りの方必見です。

 

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急性扁桃炎になる原因

 

のどの構造について

 

急性扁桃炎

急性扁桃炎

 

のどは専門用語で咽頭(いんとう)喉頭(こうとう)と表現される管の構造です。

 

咽頭は鼻腔や口から連続した構造で、下方には喉頭が存在しています。

 

咽頭は上から下にかけて、上咽頭、中咽頭、下咽頭と分類されます(図参照)。

 

咽頭・喉頭の分類としてのイメージは、以下の認識です。

 

  • 咽頭は食べ物の通り道
  • 喉頭は空気の通り道

 


咽頭では、口で咀嚼された食事がさらに咽頭の壁で潰され、食道へ流されます。

 

喉頭は声門を介して気管と連続し、呼吸の際に空気が出入りします。

 

食事が食道までに到達するまでには、”嚥下(えんげ)”という機能が働き、咽頭と喉頭が協調して働き、食物が気道に落ちずに食道に入って行くように調整してくれています。

 

この機能が病気や加齢でうまく行かなくなり、食事が気管に落ちてしまうことを誤嚥(ごえん)と言います。

 

扁桃(へんとう)ってなに?どこにあるの?

 

急性扁桃炎

 

よく扁桃腺(へんとうせん)という言葉を耳にしますが、これは医学用語ではありません。

 

扁桃という言葉が正確な用語になります。

 

それでは扁桃とは何をしている臓器でしょうか?

 

扁桃は、体の外から侵入してきたウイルスや細菌などの微生物に対する免疫学的な役割を果たしています。

 

実際に、この扁桃組織では免疫反応を起こす上で大切なリンパ球が多数みられます。

 

『扁桃腺をとる手術』というフレーズもよく聞きますが、ここで言う扁桃腺(扁桃)とはどの部位を指しているでしょうか?

 

多くはこの扁桃とは”口蓋扁桃(こうがいへんとう)のことを言っています(図参照)。

 

急性扁桃炎

 

しかし、実際には口腔・咽頭領域には多数の扁桃組織が存在しています。

 

この口腔・咽頭領域に多数存在する扁桃組織は輪っか状に配列されており、Waldeyer(ワルダイエル)咽頭輪(いんとうりん)と呼ばれます。

 

ワルダイエル咽頭輪には、口蓋扁桃の他に以下が左右対称に配列しています。

 

  • 舌扁桃(ぜつへんとう)
  • 耳管扁桃(じかへんとう)
  • 咽頭扁桃(いんとうへんとう)別名:アデノイド
  • 咽頭側索(いんとうそくさくえん)

 

ペンライトなどで口の中を見た時に実際に見えるのは口蓋扁桃と咽頭側索のみです。

 

咽頭扁桃、耳管扁桃は鼻の奥の方に存在し、舌扁桃は舌の付け根(後ろの方)に存在しているため、耳鼻咽喉科の検査で使用する喉頭鏡やファイバーを用いないと見ることはできません。

 

参考に、それぞれの扁桃組織の写真を掲載します。

 

これは、30代後半ののど所見です。ちなみに私ののどの写真です。

 

急性扁桃炎

 

みなさんはこれを見て、どう感じるでしょうか?

 

赤い矢印はあるものの口蓋扁桃以外はどこにあるのかよくわからないのではないでしょうか?

 

それが普通の感想だと思います。

 

実は、これらの扁桃組織は子供では大きいのですが、成長発達に伴って縮小してしまい、口蓋扁桃以外ははっきり残りません。

 

厳密には口蓋扁桃も多くの成人では、ほとんど萎縮してしまい痕跡的な所見となることが多いです。

 

これらの扁桃組織はパッと見はわかりません、いざ風邪などののどの炎症の病気になった時に急に変化して、炎症所見を見せてくれます。

 

つまり炎症所見がないとはっきりしないのが扁桃組織です。

 

参考に子供(6歳)の扁桃所見を以下に提示します。

 

急性扁桃炎

 

扁桃組織がよくわかるように、やや肥大気味の扁桃所見の患児の写真を掲載しました。

 

これは因みに私の子供の写真です。

 

大人(私)と比較すると、口蓋扁桃が大きく内側に突出しています。

 

咽頭扁桃(アデノイド)もやや大きく盛り上がっています。

 

舌扁桃も大人と比べるとぼこぼこした度合いが強いように見えるかと思います。

 

ややいびき症があるうちの子供は、このように扁桃肥大がありますが、普通のお子さん(6歳程度)は、もう少し扁桃は小さいです。

 

口蓋扁桃について

 

急性扁桃炎

 

それではもう少し扁桃組織の構造についてフォーカスしていきましょう。

 

その代表格である口蓋扁桃について深堀りします。

 

先ほど『扁桃は、体の外から侵入してきたウイルスや細菌などに対する免疫学的な役割を果たしています』と言いました。

 

では、これはどのようにして反応が起こるのでしょうか。

 

そのためにはまずは口蓋扁桃の構造をみていく必要があります。

 

扁桃の語源は、『アーモンド』です。

 

口蓋扁桃がアーモンドの形に似ていることからこの名前が命名されました。

 

急性扁桃炎

 

アーモンドの表面ってゴツゴツしていますよね。

 

実は扁桃組織の表面もへこみがあり、いびつな表面をしています。

 

なんでいびつな構造をしているかというと、表面には扁桃陰窩(へんとういんか)といって、くぼみのような構造があります。

 

この陰窩が免疫学的に非常に大切な構造です。

 

このくぼみにウイルスや細菌などが入り込みやすくなることで、中に入った微生物に対する免疫反応を起こしやすくしています。

 

急性扁桃炎文献1より引用・改編

 

この上図は、口蓋扁桃組織表面の電子顕微鏡の写真です。

 

表面は非常にゴツゴツしており、凹凸があります。

 

さらにピンクで囲んだ部位が陰窩のくぼみであり、クレーターのようになっています。

 

このクレーターの中には免疫細胞である貪食細胞(どんしょくさいぼう‐微生物を食べてその情報を仕入れる細胞)やリンパ球を主体とした各種の細胞が存在しています。

 

クレーターの中に存在している白っぽい毛羽だった球体が免疫細胞です。

 

この陰窩という構造はこのように、穴のくぼみで異物を引き寄せ、免疫細胞が常にスタンバイされていることにより、微生物をやっつけるのと同時に、この微生物に対する免疫反応を起こさせる構造になっています。

 

ハエトリグサの生存戦略みたいな感じですね。


このように、扁桃組織とは外から入り込んでくる微生物をトラップして、やっつける役割と、その微生物に対して免疫を作る役割があると考えられています。

 

つまり、扁桃組織は微生物に対してウェルカムな環境であり、感染自体も起こりやすい臓器であることがわかります。

 

▶︎感染症の分類や種類を簡単解説|なぜコロナは5類になったの?

 

急性扁桃炎の主な症状

 

炎症ってなにがおこってるの?

 

急性扁桃炎

 

急性扁桃炎は扁桃の機能を考えると、”感染による炎症””免疫反応による炎症”を考慮する必要があります。

 

扁桃組織の感染はイメージしやすいかと思います。

 

先ほど述べた扁桃の陰窩に細菌やウイルスが取り込まれ、そこで感染が成立することです。

 

一方で、免疫反応による炎症は、良いことのように聞こえますが、これも強い症状の原因となります。

 

感染と免疫反応による炎症は独立した現象のように思われますが、実は連動しています。

 

感染は、その部位で成立すると何がおこるでしょうか?

 

体は、その感染した微生物を生体から排除しようと頑張ります。

 

その感染に対する頑張りというのが、炎症という現象です。

 

炎症の基本は、微生物が生存しにくい環境作りをするということです。

 

例えば、むし歯に関して言えば、歯の根っこや歯周に感染が成立して、感染に対して炎症が起こると、歯の周囲は腫れあがり、熱を持ち、痛くてご飯が食べられませんよね。

 

これは、炎症の5兆候という現象が組織で起きているからです。

 

炎症の5兆候とは、医学では非常に大切な考え方で、これをよく理解すると医学の大原則の一つを理解したようなものですが、今回は簡単に紹介いたします。

 

以下に5つの兆候を示します。

 

急性扁桃炎

 

    • 発熱
    • 熱感
    • 腫脹
    • 疼痛
    • 機能障害


この5つは、独立した現象ではなく、連動したメカニズムで起こります。

 

感染した組織はまず、細胞から『たすけてー』という悲鳴が出ます。

 

このときに、細胞から様々な物質が放出されますが、これは炎症性サイトカインといって、大変なことが起こったという悲鳴を周りの細胞や遠くの臓器に伝える手紙のような役割があります。

 

この炎症性サイトカインは、その感染が起こった組織においては、周囲の血管を拡張させます。

 

すると、暖かい血液が流れている血管の組織に対する割合が増えることで、組織の温度が上昇し、組織の熱感が生じます。

 

それとともに、血管は拡張すると、間質という細胞と細胞の間の隙間に血管の中を流れている血漿成分(けっしょうせいぶん‐血液の中の赤血球とか白血球などの細胞を除いた成分)が漏れ出ていきます。

 

急性扁桃炎

 

これを滲出液といいますが、これが間質に溜まると、組織局所は腫れます。

 

このように、血管拡張がおきたり、臓器に水が溜まると、周りの組織に圧力がかかります。

 

臓器の表面には膜がありますが、基本的にその膜に末梢神経が入っていることが多く、この膜が引っ張られると神経も引っ張られることにより、痛みが起こります。

 

また、炎症性サイトカイン自体が、組織に分布する末梢神経を刺激して痛みを起こす仕組みもあります。

 

ここまでが、炎症に伴う疼痛(とうつう)のメカニズムです。

 

さらに、この組織の腫れが強くなると、生体の正常機能がしにくくなりますね

 

例えば、手足の関節が感染して腫れてしまうと、腫れによって滑らかな関節運動はできなくなり、引っかかりのあるような運動となってしまいます。

 

これを炎症による機能障害と言います。

 

そして最後に発熱ですが、これは炎症性サイトカインが遠くに作用するとおこります。

 

どこに作用するかというと、脳の視床下部(ししょうかぶ―内分泌や自立機能の調整を行う総合中枢)です。

 

全身のどこかの臓器(組織)で炎症がおこると、炎症性サイトカインが産生され、これが血管に入って、はるばる脳まで流れて行きます。

 

視床下部は、自律神経や内分泌系臓器に働きかけ、全身のコンディションを整えてくれる縁の下の力持ちです。

 

体温もここ視床下部がこっそりと調整してくれて、外界が熱ければ、体温を下げ、寒ければ体温を上げてくれます。

 

この機能を自由に調節できたら、どんな環境でも生きることができるスーパーマンですが、これは自分の意思ではコントロールできません。

 

そんな視床下部に、炎症性サイトカインが作用すると、微生物が生体内で生存しにくい温度まで体温をさせます。

 

これが発熱の原理です。

 

ここまでが、組織でおこる炎症の第1章です。

 

ここから、さらに第2章に進みます。

 

第1章で、血管から水が漏れ出してくると言いましたが、局所に炎症があるとサイトカインが、入ってきた微生物を駆逐したり食べたりする細胞を呼び寄せます。

 

この細胞は、白血球(好中球、リンパ球、好酸球、好塩基球、単球など)と呼ばれ、局所で免疫反応を起こし、さらに炎症が強化されます。

 

因みに菌が感染すると好中球、ウイルスが感染するとリンパ球が誘導されて反応を起こします。

 

このようにして、感染が成立すると、感染による炎症もありますが、免疫反応としての炎症も連動しておこります。

 

炎症反応はどこの臓器でもおこります。

 

しかし、ここで扁桃炎に話を戻しますが、扁桃組織はそれ自体が免疫臓器です。

 

口蓋扁桃の構造のところで示しましたが、扁桃は陰窩があり微生物が入りやすく、白血球と反応しやすい場所であり、免疫反応を起こしやすい特徴があると述べました。

 

つまり、扁桃炎は感染によるものと免疫反応による症状がダブルパンチで起こりやすい臓器ということになります。

 

急性扁桃炎

 

扁桃における炎症の症状

 

それでは、2-1でお話した炎症の機序が扁桃組織に起きたとき、どのような症状がおこるでしょうか?

 

咽頭痛(のどのいたみ)

 

急性扁桃炎

 

これはイメージつきますね!

 

扁桃組織の中で、炎症の結果、血管が腫れる、水が漏れる、炎症の細胞が増える、炎症性サイトカインによる神経への刺激などにより、鋭い痛みが出ます。

 

何もしなくても痛いですが、特に食事を飲み込む(嚥下時)に激痛が起こります。

 

嚥下時は、扁桃周囲の筋肉が、ぎゅーっと収縮して、ご飯を口からのどに落とし込みますが、そのときに扁桃組織も一緒にぎゅーっと搾られる感じになります。

 

もともと痛いところをぎゅーっと押し潰されたら、それは痛いですよね…

 

頸部リンパ節腫脹

 

急性扁桃炎

 

扁桃炎が起こると、首のリンパ節が腫れます。

 

これは、頸部には所属リンパ節といって、のどの中のとある部位で炎症などのトラブルが起こると、この辺のリンパ節が最初に腫れ、次にこのリンパ節が腫れていくといった具合に腫れが連鎖していきます。

 

扁桃炎(口蓋扁桃炎)で腫れるのは、だいたい下アゴの内側あたりのリンパ節から腫れが始まり、側頸部(耳たぶから下に下ろしていったライン)のリンパが続きます。

 

発熱

 

急性扁桃炎

 

これは、2-1でお話した通りで、扁桃から産生された炎症性サイトカインが、脳の視床下部に作用して、体温調節することで、発熱します。

 

急性咽頭炎や急性喉頭炎との違いは?

 

まず扁桃炎や咽頭炎、喉頭炎の写真をお示しします。

 

咽頭炎と喉頭炎について

 

急性扁桃炎

 

まず、コトバを見てみましょう。

 

 

急性 → 急におこる
咽頭、喉頭 → のどの場所
炎 → 炎症

 

 

ということになりますので、違いは炎症が起こる場所が違うという意味になります。

 

1-1で咽頭と喉頭の言葉の説明をしましたが、咽頭と喉頭は連続した構造であり、実際にのどで起きていることを見ることができる耳鼻咽喉科の医師でない限り、症状からこの2つの病気を分類することは困難です。

 

むしろ、咽頭炎と喉頭炎は同時進行で起きていることが多く、耳鼻咽喉科でも急性咽喉頭炎というざっくりした診断名をつけることが多くなります。

 

しかし、今起きている現象が、どちらかというと咽頭炎ベースなのか、喉頭炎ベースなのかということを考えることが、今後起こりうることを想定する上で大切です。

 

咽頭炎ベースなのか喉頭炎ベースなのかを判定する症状のヒントを以下に示します。

 

急性扁桃炎

 

咽頭炎ベースと思われる症状

・頭痛
・怠さ
・鼻詰まり
・後鼻漏

 

喉頭炎ベースと思われる症状

・声枯れ
・咳(乾いた咳)
・呼吸困難感
・ヒリヒリしたのどの感じ
・のどの違和感

 

咽頭は、上咽頭から下咽頭に分かれ、縦に長い臓器なので、症状の範囲も広くなります。

 

上から下咽頭まで炎症が同時に起こることもありますが、まずは上咽頭や中咽頭から炎症がはじまり、二次性に下咽頭まで炎症が起こる印象があります。

 

急性扁桃炎

 

炎症波及の流れ

・上咽頭を起点とした炎症波及
 上咽頭→中咽頭→下咽頭
・中咽頭を起点とした炎症波及
 中咽頭→下咽頭

 

下咽頭を起点として、上に炎症が登ってくるというのはあまりみられません。

 

腫瘍性の病気の場合はありえます。

 

また下咽頭と喉頭は、ほぼ同じ高さにある構造であり、喉頭の炎症と下咽頭の炎症はほぼ100%同時におこるといってもいいでしょう。

 

扁桃炎と咽頭、喉頭炎について

 

急性扁桃炎

 

それでは、扁桃炎と咽頭炎、喉頭炎との関連性について見ていきましょう。

 

それぞれの扁桃組織がどこにあるか、以下に示します。

 

上咽頭に存在する扁桃

耳管扁桃、咽頭扁桃(アデノイド)
ここに炎症起こすと、、上咽頭炎

中咽頭に存在する扁桃

口蓋扁桃、咽頭側索、舌扁桃
ここに炎症起こすと、、口蓋扁桃炎、咽頭側索炎、舌根扁桃炎

 

基本的にそれぞれの扁桃が炎症を起こしたときに、その周囲の咽頭、喉頭組織に炎症を波及させるので、咽頭扁桃や耳管扁桃の炎症であれば、上咽頭炎を引き起こし、口蓋扁桃の炎症であれば中咽頭の炎症となります。

 

1-1で述べた咽頭、喉頭の構造を見返していただければ、理解しやすいと思います。

 

耳鼻咽喉科では、扁桃炎を細かく言う先生は、上咽頭炎、口蓋扁桃炎、咽頭側索炎、舌根扁桃炎と分類することもあります。

 

急性扁桃炎(細菌性)は、以下の図のように、扁桃は赤く腫れあがり、その周囲の粘膜も赤くなり、陰窩を起点に膿が溜まったようなのどの所見となります。

急性扁桃炎 急性扁桃炎

 

次に、上咽頭炎は、以下の写真のように上咽頭に膿がベターっとついています。

 

ちなみにこれは耳鼻咽喉科のファイバーを使用しないと見えません。

 

子供のように残存した咽頭扁桃組織が腫れ上がる方もいます。

 

急性扁桃炎


続いて、舌根扁桃炎です。

 

舌の付け根のあたりを上から眺めている写真になりますが、ぼこぼこはれた舌扁桃組織の表面に膿栓がつきます。

 

急性扁桃炎


このように急性扁桃炎と咽頭炎では所見が異なります。

 

ご自身でも口の中を見てみるといいでしょう。

 

両側の口蓋扁桃(アーモンド)が赤く腫れ上がっていたり、扁桃の中に白いポツポツや白い膜のようなものが覆っていたりした場合は、急性扁桃炎の可能性があります。

 

細菌感染とウイルス感染について

 

また、菌の感染なのかウイルスの感染なのか、はたまた菌とウイルスの混合感染なのかで、炎症の場所がなんとなくわかることもあります。

 

全身の感染症全てで言えることではありますが、

 

一般的にウイルスは、組織の広い範囲にダメージを与える。

 

細菌は、狭い範囲に強い炎症を起こす。

 

というイメージでしょうか。

 

のどでいえば、

 

ウイルス性だと咽頭(上から下)炎、喉頭炎と広く障害を与え、

 

細菌だと扁桃、咽頭といったように一箇所にしっかり根を張って感染を起こし、そこからゆっくり周りの組織に炎症を広げていく

 

といった感じです。

 

ウイルスと細菌ではサイズも全く異なります(ウイルスは細菌の1/50ほどの大きさ)し、組織への感染の仕方も全く異なります。

 

ウイルスは基本的に慢性感染を起こしにくいですが、細菌は組織に慢性感染を起こして根を張るという違いからおこることが想定されます。

 

扁桃組織は構造上、細菌の慢性感染を引き起こしやすく、一度慢性感染を起こすとなかなかスッキリ治りにくいです。

 

しかも、慢性感染状態だと、いつでも急性感染の状態(咽頭痛や発熱などツライ症状を起こしやすい状態)になりやすいといった特徴があります。

 

大まかにですが(厳密には違います)、

 

急性扁桃炎は、細菌感染症
急性咽喉頭炎は、ウイルス感染症

 

というイメージをもってよいでしょう。


ウイルスはのどの粘膜の一つの細胞に感染すると、細胞内に入り込み壊し、次々に周辺の細胞を壊しながら増殖するという感染したときの特徴があります。

 

このメカニズムによって、どんどん広い範囲に炎症を波及させ、のど全体を焼け野原にします。

 

のどの粘膜には異物から守るバリア機能が存在しますが、焼け野原になるとこのバリア機能は破綻します。

 

そうすると、二次性に容易に細菌感染を起こします。

 

鼻やのどには菌はたくさん存在していますが、感染が起こらないのはバリアがあるおかげです。

 

いざ、このバリアが破壊されたときに、本来は共生していて悪さをしなかった細菌も、人体に感染を起こして炎症を起こすようになるのです。

 

それ故に菌の感染がおこるのは、バリアを破綻させる原因として、ウイルス感染がその前にあったというだけでなく、物理的な外傷や空気の湿度、温度なども原因となり得ます。

 

外傷はイメージしやすいかと思いますが、空気の湿度や温度ってそんなに大切??と思われるかもしれません。

 

吸入する空気の状態と粘膜について

 

急性扁桃炎

 

ここでは、みなさんが普段している呼吸について考えてみたいと思います。

 

人間は、通常鼻呼吸をしています。

 

しかし、鼻炎(アレルギー性鼻炎や風邪)や口腔機能に問題がある場合は、鼻呼吸から口呼吸に切り替わります。

 

この口呼吸が、実はのどの状態を劣悪な環境にしてしまうのです。

 

鼻の機能ってなんでしょうか?

 

鼻は匂いをかいだり、呼吸する上での通り道という漠然とした認識があると思いますが、鼻は気道の入り口で非常に大切な役割を果たしています。

 

そのうちの3つの大切な役割をお示しします。

 

1、ろ過・浄化
2、加温
3、加湿

 

呼吸する上で、吸入する空気には色々な物質が含まれています。

 

ウイルスや細菌などの微生物や花粉やホコリなどの異物などが、たくさん入ってきます。

 

これらの異物を鼻でブロックするのが、1のろ過・浄化作用

 

鼻毛で大まかにフィルタリングされ、実際に鼻の中に入り込んでしまったら、鼻粘膜表面の粘液や線毛(粘膜表面に生える微細な毛の構造)によって、のどに流されます。

 

ここの防御線をも超えてきた微生物に対しては、白血球の中の好中球やリンパ球による感染防御や免疫反応を起こし、微生物を撃退します。

 

花粉やホコリなどの異物に対しては、アレルギー反応による、くしゃみや鼻汁分泌でこれ以上の異物の侵入をブロックするように働きます。

 

これらによって、のどや気管、肺に異物が入ってこないようにしています。

 

また、外から入ってくる空気は微生物や異物が存在しなくても、のどや気管に都合の悪い空気の場合もあります。

 

では、のどや気管に都合の良い空気とはどのようなものかと言うと、『適度な湿度、温度』の空気です。

 

鼻は、2、加温機能、3、加湿機能によってこの都合の良い空気の状態を作ってくれます。

 

特に、温度20℃、相対湿度50%の空気を吸入すると、鼻呼吸が機能していれば、上気道(咽頭、喉頭のレベル)で温度32℃、相対湿度90%まで調整し、気管が初めて左右に別れる部位においては、温度37℃、相対湿度100%まで加温・加湿してくれます(文献2参照)。

 

この“加温加湿、防塵機能付きエアコン“のような機能をもつ鼻を介さずに、口呼吸がおこるとどうなるでしょうか?

 

乾燥した冷たい空気がのどに入ってくることで、のどの粘膜にダメージをきたします。

 

のどの粘膜にも鼻と同様に線毛と粘液による粘膜バリアが存在しています。

 

これらは乾燥と冷気により粘膜線毛機能が低下し、気道の炎症を引き起こし、喘息や慢性閉塞性肺疾患といった炎症性疾患やインフルエンザやコロナウイルス感染症などの気道感染症を引き起こしやすいことがわかっています(文献3参照)。

 

特に口蓋扁桃は、感染を起こしやすい臓器とお話しましたが、口呼吸のもとでは、なおさら感染を起こしやすくなります。

 

このような感染を繰り返すうちに扁桃は慢性的な炎症をおこす結果、しだいに組織の肥大(過形成)をきたし、大きな扁桃組織となってしまいます(文献4参照)。

 

詳細は割愛しますが、これがお子さんでおこると、小児睡眠時無呼吸症候群につながり、睡眠障害や成長発達障害の原因となります。

 

▶︎腹痛が起こる・続く原因のまとめ|緊急性の高い痛みの特徴も解説

 

急性扁桃炎はうつる?

 

急性扁桃炎

 

基本的に、急性”扁桃炎”は感染しません。

 

しかし、特殊なウイルスでおこる扁桃炎は、キスなど唾液を介した接触があるとうつります。

 

厳密には、見た目は急性扁桃炎(細菌性)ですが、EBウイルスというウイルス感染による伝染性単核球症があります。

 

急性”咽喉頭炎”はうつる可能性があります。

 

先ほど述べた、いわゆるウイルスによる咽喉頭炎です(扁桃炎ではなく)。

 

伝染性単核球症について

 

急性扁桃炎

 

EBウイルスは、乳幼児期に70-90%の人が感染し、持続感染とともにEBウイルスに対する抗体を持ち、特に症状もなく大人になります。

 

しかし、思春期以降まで感染しなかった人が、大人になって初めて感染した時に激烈な症状をきたします。

 

つまり、うつる可能性のある扁桃炎のカテゴリーに入れてしまいましたが、EBウイルスはほとんどの方が幼少期に感染を起こし、すでに持続感染し抗体を保持していいます。

 

そのため、伝染性単核球症(でんせんせいたんかくきゅうしょう―EBウイルスによって引き起こされる病気)の患者さんとキスをしたからといって、発症する可能性は低いと考えられます。

 

伝染性単核球症のEBウイルス感染はあくまでも発症のきっかけでしかなく、感染によって二次的におこる免疫反応が病態となる疾患です。

 

扁桃にはリンパ球が存在すると言いましたが、そのリンパが反応で大量に増殖して扁桃に免疫学的な炎症を引き起こしてしまうというのが原因です。

 

扁桃所見としては、口蓋扁桃だけではなく、咽頭扁桃や舌扁桃などの扁桃組織にもベターっとした白い炎症産物をくっつけます。

 

特徴的なのは、頸部のリンパ節の腫れ方です。

 

細菌性の急性扁桃炎では、顎の下のリンパ節が腫れることが多いですが、伝染性単核球症では、後頸部といって、首の後ろのほうのリンパ節が腫れることが多いです。

 

また、採血ではウイルス感染を示唆する炎症の値や特殊なリンパ球が血液中に出てきます。

 

そして、肝機能障害も起こします。

 

伝染性単核球症の厄介なところは、ぱっと見て急性扁桃炎と鑑別が難しいところです。

 

しかも、急性扁桃炎でよく使用するペニシリン系の抗生物質を使用すると、全身に皮疹をおこす可能性があるというのも特徴的で、注意を要します。

 

さらに、伝染性単核球症の症例の1/3に細菌性の急性扁桃炎を合併するために、抗生剤の投与が必要になることがあります。

 

そのため、抗生剤をどうするか、、というのが医者泣かせの疾患であります。

 

のどの所見や採血検査結果から、以下を考察したうえで処方に踏み切る必要があります。

 

  • 処方する前に急性扁桃炎なのか?
  • 伝染性単核球症なのか?
  • はたまた混合感染なのか?

 

急性咽喉頭炎について

 

急性扁桃炎

 

急性咽頭炎も喉頭炎も言わば『かぜ』です。

 

多くは風邪ウイルス(ライノ、RS、アデノ、エンテロ、コロナ、インフルエンザなど)感染による咽頭や喉頭の炎症です。

 

では、なぜ『かぜ』はうつるのか?という疑問が浮上するかと思います。

 

先ほど、ウイルスは人の細胞内に侵入し、壊しては周辺の細胞にまた感染を繰り返してウイルスを増殖していくと言いました。

 

その過程で焼け野原でぼろぼろとなった細胞表面の粘液にもたくさんのウイルスが付着しているのです。

 

そして、風邪ウイルス(気道感染ウイルス)や壊れた気道の表面の細胞は、気道の神経を刺激して、あたかも喘息のようなアレルギーと似たような反応を引き起こします。

 

それによって、鼻であればくしゃみや鼻水、のどや気管であれば咳や痰といった症状が反射的に生じます。

 

それによって、粘膜に付着していたウイルスは、体外に吹き飛ばされます。

 

これによって近くにいた人が、そのくしゃみや咳に乗った空気を吸い込むと感染します。

 

これを飛沫感染といい、昨今の新型コロナ感染症も基本的にはこの感染様式をとり、多くの感染者を生み出してしまいました。

 

風邪ウイルスの種類によって症状の出方は少なからず異なりますが、基本的に上気道症状(咳や鼻水、咳など)は起こります。

 

しかし、厄介なことにこのウイルス性急性咽喉頭炎と、アレルギー性鼻炎やそれに伴う咽喉頭症状は非常に似ているため、医者泣かせの症状となります。

 

ときにアレルギーがベースにあり、そこにウイルス感染も併発している人も見られるので、さらに対応が難しくなります。

 

鑑別のヒントとなる症状として、鼻やのどのむず痒さがあるときは、アレルギーによる(アレルギーがベースとなる)症状と考えてよいでしょう。

 

その他の感染症について

 

急性扁桃炎

 

その他の咽頭痛を起こす、”うつる”可能性のある感染症を列挙します。

 

・小児感染症
ヘルパンギーナ:発熱、咽頭痛で発症し、口腔の軟口蓋(のどちんこおよびその周囲)に口内炎のような炎症を起こす。
風疹:全身(顔面、頸部、体幹、四肢)への急速に進行する皮疹と口腔内の粘膜疹(点状の出血斑や紅斑を口蓋に認める)を起こします。
手足口病:舌、口唇粘膜、頬粘膜、軟口蓋に口内炎のような粘膜疹が生じる。手のひらや足の裏に小さい水疱が生じる。

・性感染症  
扁桃炎の盲点となる疾患が、性感染症です。
以下に列挙する、疾患は一般的な急性扁桃炎との鑑別が時に困難となるため、通常の経過ではない場合は性感染症を疑うべきです。
梅毒による咽頭扁桃病変、淋菌やクラミジアによる咽頭扁桃炎、HIV感染による咽頭扁桃炎

 

急性扁桃炎の重症化と入院が必要なケース

 

急性扁桃炎は重症度によって、だいぶ症状と治療法が異なります。

 

急性扁桃炎により水が飲めない

 

急性扁桃炎

 

軽い扁桃炎であれば、唾を飲み込んだときの軽いのどの違和感くらいです。

 

しかし、重症化すると食事摂取が困難なほどの、のどの痛みになります。

 

のどが痛く、飲み込みがうまくいっていない患者さんののどの写真を示しますが、炎症所見とともにのどの食道との繋ぎ目の部位に、痰がたまっているのが特徴です。

 

これは、嚥下障害の患者さんと同じ所見で、扁桃炎の場合は、痛みのために、自然と飲み込むことを回避してしまっているので、のどに痰がたまっています。

 

急性扁桃炎

 

食事がとれないと脱水になります。

 

数日間くらい食事(栄養として)が摂れないというのは、人間はそれほど問題になりません。

 

一カ月くらいであれば、絶食でも体に蓄えられていた脂肪やタンパク質を分解することでなんとかなります。

 

しかし、脱水だけはそうはいきません。

 

水を4〜5日くらい一滴も飲まないだけで、人間は死んでしまいます。

 

つまり、急性扁桃炎のために脱水になるくらい飲水ができない場合は、点滴で脱水を是正してあげる必要があります。

 

つまり入院が必要となります。

 

急性扁桃炎が重症化した扁桃周囲膿瘍

 

急性扁桃炎

 

扁桃(口蓋扁桃)は、咽頭収縮筋などの筋肉に包まれて存在しています。

 

その筋肉と扁桃の間はうすーい被膜という構造があり、ここは炎症がない子供などでは、ペリペリすぐに剥がれるという特徴があります(もちろん部分的に筋肉が腱として入り込むので、落ちてきちゃうなんてことはありません)。

 

急性扁桃炎の炎症が慢性化、重症化したときに、この薄い被膜が存在している部位に膿がたまってしまうことがあります。

 

これを扁桃周囲膿瘍と呼びます。

 

扁桃周囲膿瘍の患者さんの口から見た写真を下に示しますが、基本的に片側の扁桃とその周囲の軟口蓋粘膜が腫れて左右差があるのがおわかりでしょうか。

 

急性扁桃炎

 

扁桃周囲膿瘍の特徴は、どんどん首の下の方に落ちていくという特徴があります。

 

首の下の方の筋肉や臓器などの器官どうしの隙間には、扁桃と同じく被膜があり、ここは基本的に炎症を周りに波及しやすく、膿が上の方で作られると、重力で下にどんどん落ちていくという特徴があります。

 

これがさらに最重症となると、頸部膿瘍(けいぶのうよう)や縦隔膿瘍(じゅうかくのうよう)を起こします。

 

縦隔(肺と心臓の間の隙間)まで膿が落ちる縦隔膿瘍という病気は、放置すれば2人に1人が亡くなる病気になることがあります。

 

扁桃周囲膿瘍の治療は切開または針穿刺で、膿を抜くことが原則です。

 

これは耳鼻咽喉科でしか処置はできません。

 

基本的に切開処置をした場合は、入院となることが多いです。

 

しかし、扁桃周囲膿瘍は、痛みが非常に強く、食事摂取はほぼ不可能であり、入院が妥当と考えます。

 

扁桃周囲膿瘍を考慮する症状は以下などがあります。

 

  • 嚥下時の激痛
  • 口が開きにくい
  • こもった声になる
  • 呼吸困難感
  • 食事摂取、飲水困難
  • 片側だけののどの痛み

 

このような症状のときは、無理せずお仕事は休んで、耳鼻科に受診しましょう。

 

急性喉頭蓋炎と喉頭浮腫

 

急性扁桃炎

 

次に急性扁桃炎と間違いやすいですが、放置すると命に関わる疾患として急性喉頭蓋炎(きゅうせいこうとうがえん)と喉頭浮腫(こうとうふしゅ)について説明します。

 

急性喉頭蓋炎

1-1.において、のどの解剖の最後に嚥下について説明しました。

 

空気の通り道と食事の通り道を隔てつつ、誤って食事が空気の通り道に落ちない役割をしている喉頭蓋という構造が喉頭にありす。

 

この喉頭蓋に感染がおこる(多くはインフルエンザ菌という細菌の感染)と、急性喉頭蓋炎という病気を発症します。

 

急性喉頭蓋炎は、空気の通り道に異物が詰まったような状態になるため、炎症が進行すると空気のとおり道を塞いでしまい呼吸ができなくなります。

 

唾を飲むと激痛+呼吸困難感(空気をうまく吸えない)という症状があった場合は、急性喉頭蓋炎の可能性があるため医療機関へ受診することをお勧めします。

 

下に急性喉頭蓋炎の写真(左)を載せます。

 

右は正常な方の喉頭蓋の写真ですが、厚ぼったさが全く違いますね。

 

v 急性扁桃炎

 

喉頭浮腫

喉頭浮腫は喉頭組織全体もしくは、喉頭披裂部(こうとうひれつぶ)という部分が浮腫(粘膜の中に水膨れができるようになる)によって、これも空気の通り道を塞いでしまう病気です。

 

原因としては、アレルギーなどの炎症性疾患や感染でひきおこります。

 

しかし、アレルギーに伴う喉頭浮腫はあまり喉が痛いという症状は目立たないです。

 

しかし、感染による喉頭への炎症波及では強い痛みを伴います。

 

感染に伴う喉頭浮腫は、これまでに挙げてきた疾患全てが悪化した際には起こりうる病態です。

 

例えば、扁桃周囲膿瘍でも喉頭浮腫を合併することはありますし、舌扁桃炎はでは、解剖学的に隣に喉頭がありますので、炎症が伝わりやすく、喉頭浮腫を合併することが多いです。

 

急性喉頭蓋炎も喉頭浮腫もともに緊急入院を要する疾患です。

 

入院し、ステロイドや抗生剤の点滴が必要となります。

 

受診されて、空気の通り道があまりにも狭く、体の中の酸素の値が低くなっていたり、狭いことでヒューヒュー音がするくらいの場合は、かなり緊急性が高く、緊急気道確保(気管挿管、気管切開)を要することもあります。

 

場合によっては一刻を争う状態となる疾患であり、自覚症状によっては救急車で受診をする必要があります。

 

▶︎頭痛の原因|種類によって痛む場所は違う?対処法や外来での治し方

 

急性扁桃炎の治し方について

 

急性扁桃炎に対して、①症状に対するお薬 ②原因に対するお薬 があります。

 

①症状に対するお薬 ⇨ 痛みどめ、熱さまし

②原因に対するお薬 ⇨ 抗生剤(抗菌薬)、扁桃炎の炎症を落とすお薬

 

急性扁桃炎に対する市販薬

 

急性扁桃炎

 

①症状に対応するお薬:痛みどめ 

ロキソニンS®︎(ロキソニン)、イブA錠®︎(イブプロフェン)、ラックル®︎、バファリン®︎、(カロナール)など

 

ロキソニンやイブプロフェンはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)という薬剤です。

 

カロナールにはない抗炎症作用があり、鎮痛剤としては鋭く効果があります。

 

しかし、胃に負担がかかったり、喘息の方に使用した場合に喘息発作を誘発するなどの副作用があり注意が必要です。

 

カロナールは妊婦さんや小児にも使用できますが、マイルドな薬剤なので重症度の高い急性扁桃炎には効果は今一歩である可能性があります。

 

②原因に対するお薬:炎症を抑えるお薬

抗生物質の内服は市販では一般的に売られていません。

 

それ故に病院に受診して処方してもらうしかありません。

 

市販薬としては、扁桃の炎症を抑える作用としてハレナース®︎、ペラックT錠®︎などがあります。

 

これらにはトラネキサム酸やカンゾウ(漢方薬)が含有されており、トラネキサム酸は炎症局所で増加する酵素のプラスミンを抑え局所の腫れを抑制し、カンゾウは主成分のグリチルリチンが作用し、炎症を抑えるように働きます。

 

ともにマイルドな効果であり、急性扁桃炎の初期治療として有用です。

 

急性扁桃炎に対する病院での処方

 

急性扁桃炎

 

①症状に対するお薬:痛み止め

 

解熱、鎮痛剤については、市販薬と同じでロキソニンやカロナールとなります。

 

しかし、病院ではこれらのお薬の注射での点滴薬もあるので、あまりにも強い咽頭痛の患者さんには注射薬を使用することもあります。

 

②原因に対するお薬:抗生剤

 

治療として、病院では抗生剤(細菌をやっつけるお薬)の処方ができます。

 

咽頭炎単独の場合は処方されないこともありますが、扁桃炎で重症化のリスクがあると判断された場合は、抗生剤を処方されます。

 

ウイルス性咽頭炎に対して、ウイルスをやっつけるお薬(抗ウイルス薬)はくれないの?という疑問があるかもしれませんが、ウイルス感染に対しては基本的に抗ウイルス薬は使用しません。

 

ウイルスに対しては、患者さんの免疫力(自然治癒力)に期待して、①のお薬や咽頭の修復を補助するお薬がでます。

 

抗生剤としては、まず推奨されるのはペニシリン系のお薬で、サワシリン®️やオーグメンチン®️などです。

 

ときに、セフェム系のフロモックス®️やメイアクト®️、ニューキノロン系のレボフロキサシン®️やジェニナック®️、ラスビック®️などが処方されることもあります。

 

しかし、4-1で伝染性単核球症の患者さんにペニシリン系のお薬を使用すると、全身に皮疹を生じる可能性があるということを述べました。

 

つまり、ペニシリン系はこの病気でないことを確認した上で処方します。

 

入院した場合は、これらの抗生剤の点滴薬を使用します。

 

それぞれの薬剤ごとで薬効は異なりますが、基本的に内服薬より点滴薬の有効性は高くスッキリ治りやすいです。

 

急性扁桃炎に対するそのほかの対応

 

1番大切なのは、脱水にならないことです。

 

6-1で述べましたが、重症化して食事や飲水がうまくできない場合は、入院してしっかり点滴してもらうことが大切です。

 

痛いけど大丈夫だろうと我慢すると、脱水になって命に関わる状態に繋がったり、悪化して扁桃周囲膿瘍などに繋がるリスクがあります。

 

急性扁桃炎に対する病院での処方例

 

①ロキソニンまたはカロナール

②サワシリン、トランサミン、ムコダイン、うがい薬

 

アレルギー性鼻炎による口呼吸が強く影響していると考える場合、+αで抗ヒスタミン薬(ビラノア®️、デザレックス®️など)、ロイコトリエン受容体拮抗薬(キプレス®️)などを併用することがあります。

 

急性扁桃炎にならないために

 

休養と睡眠は大切!

 

扁桃炎は感染が持続的になると、慢性化すると3−3で述べましたが、慢性扁桃炎となります。

 

慢性扁桃炎とは、扁桃組織に持続的に菌の感染が成立してしまい、いつでも急性扁桃炎を繰り返しやすくなってしまう状態です。

 

では、なんでこのように扁桃炎を繰り返してしまうのでしょうか?

 

ここでは、慢性扁桃炎の患者さんの体調と口腔内環境が大切になってきます。

 

体調とは、仕事や家庭のストレスや疲れ、睡眠不足が続いているなどの状況が関与してきます。

 

これらの身体的な負担は、体を陰ながら調整している自律神経に作用します。

 

全身の自律神経機能を調べる検査を用いた研究で、扁桃疾患の患者さんは副交感神経活動が低下し、交感神経活動が亢進している状態であったと報告されています(文献5)。

 

唾液腺(唾液を作る工場)は副交感神経が主に唾液の水分を、交感神経がタンパク質の分泌を担っています。

 

唾液は1日に1〜1.5リットル産生され、唾液の約99.5%は水分でできているために、口の中を潤しておくためには副交感神経刺激による唾液の水分量が非常に大切になります。

 

ストレスや疲れが強く、睡眠不足を起こしている患者さんは交感神経機能が活性化し、副交感神経の機能が低下しているために、口腔内は水が少なく、口腔内乾燥症の状態となります。

 

交感神経刺激により唾液中のタンパク質として抗菌物質なども含まれ産生が起こりますが、口腔乾燥症の状態ではこの機能がうまく作用できません。

 

口腔乾燥は口腔内の菌の状態を悪くすることが報告されており、溶連菌や口腔内の歯周病に関与する菌を増やします(文献6)。

 

慢性扁桃炎は溶連菌や歯周病に関する菌が、扁桃組織で慢性感染起こしていることが多く、これらの菌が口腔内で増える環境を作ることは、急性増悪として急性扁桃炎を引き起こすリスクを高めることに繋がります。

 

3-4で述べた、口呼吸も口腔環境を悪化させるために、このストレスによる口腔乾燥症と相まって注意すべきです。

 

それ故、扁桃炎にならないためには、無理に頑張りすぎたりしないことが大切です。

 

急性扁桃炎を繰り返す患者さんが、働き盛りの20〜40歳の男性に多いのはこのためと考えられます。

 

また最近では、アレルギー性鼻炎の有病率も高く(日本人の2人に1人!)、それに伴う無自覚の口呼吸の患者さんも多いと感じます。

 

そういった患者さんには、アレルギー対策も扁桃炎反復を阻止する上で有効ではないかというのが私見です。

 

喫煙は急性扁桃炎にも悪い!

 

喫煙は、口の中の環境を悪化させることで、急性扁桃炎の誘発因子です。

 

タバコの煙には、三大有害物質であるニコチン、タール、一酸化炭素が含まれています。

 

これらの物質は、口腔内の悪玉菌を増やす方向に働く作用と、口腔内の粘膜および全身の免疫系への作用があります(文献7)

 

ともに協調して口腔環境を悪くします。

 

とくに喫煙による一酸化炭素の上昇と、酸素分圧の低下は、口の中の悪玉菌である嫌気性菌(空気が嫌いな菌)を増やします。

 

嫌気性菌は扁桃炎の原因菌として多く、この菌が口腔内で増えると、急性扁桃炎のリスクファクターになりますので、喫煙は控えましょう。

 

受動喫煙でも同様の現象がおこるというデータもあり、パートナーや家族の喫煙も控えるように指導が必要です。

 

これらの扁桃炎に対する予防にも関わらず、急性扁桃炎を反復する場合(習慣性扁桃炎)は、扁桃摘出術の適応となり、全身麻酔下の手術となります。

 

家来るドクター(往診)での対応方法

 

家来るドクターでは、夜間休日の往診による救急対応が可能です。

 

咽頭痛は非常に煩わしい症状で食事摂取ができないということは、生活の質を著しく落とす原因となります。

 

まずは、脱水など全身状態を悪くするような病態に陥っていないかを見極めさせていただき、場合によっては採血や点滴を検討させていただく場合があります。

 

お薬の内服が可能な場合は、抗生剤など有効なお薬を処方させていただき、翌日に耳鼻科への受診を指示することもあります。

 

夜間休日に「のどの痛み」で困りの際は家来るドクターにお気軽にご相談ください!

 

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まとめ

 

急性扁桃炎は、軽症から入院を要する重症まで様々な患者さんがいらっしゃいます。

 

咽頭痛の症状には本コラムでお話したように、さまざまな怖い疾患が隠れていることがあり、単なる扁桃炎ではないこともしばしばあります。

 

耳鼻咽喉科の病気は普通は目に見えないところに原因がありますので、咽頭痛をおこすどの疾患であっても、まずは医師にのどを見せてくれるというのが、診療の第一歩になります。

 

特に急性扁桃炎は、20-40歳代の若くてバリバリ働いている世代の方が発症することが多い疾患です。

 

お忙しいかと思いますが、無理をせず休んで、病院に受診してみると、案外スッキリ治ってしまうことが多いので、早めの受診をおすすめします。

参考文献

1)Marko Jovic et al. Ultarastructure of the human patlatine tonsil and its functional significance. Rom J Morphol. 56(2):371-377, 2015.

2)高橋英夫:呼吸における加温・加湿の生理. Clinical Engineering 14 : 917-923 , 2003.

3)David A. Edwards, Kian Fan Chung.Mouth breathing, dry air, and low water permeation promote inflammation, and activate neural pathways, by osmotic stresses acting on airway lining mucus. CAMBRIDGE UNIVERSITY PRESS. 14 February 2023.

4)Lizhuo Lin et al. The impact of mouth breathing on dentofacial development: A concise review. Front. Public Health, 08 September 2022.

5)上月景之. 扁桃疾患における自律神経の関与に関する研究. 耳鼻臨床 82:6 ; 887-893, 1989.

6)田端宏充ら:保湿スプレー療法による口腔内乾燥症患者の口腔湿度および舌背部細菌叢への影響. 日摂食嚥下リハ会誌 18(1):44–52, 2014.

 

この記事の執筆者

専門分野

耳鼻咽喉科全般 アレルギー・鼻副鼻腔疾患

専門分野

日本耳鼻咽喉科学会専門医・指導医
日本アレルギー学会専門医

経歴

  • 三重大学医学部医学科 卒業
  • 三重県立総合医療センター
  • N 2クリニック名古屋
  • 西春内科・在宅クリニック 院長(https://nishiharu-clinic.com/doctor/

 

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