今だからこそ知ってほしい急増中の梅毒の原因と症状についてTITLE
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目次
はじめに
梅毒は近年増加傾向にあり、昔の病気ではありません。
梅毒は昔の病気というイメージがあるかもしれませんが、ここ数年は患者として報告される人数が急激に増加しています。
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梅毒とはどんな病気?
梅毒は、性的な接触(他人の粘膜・皮膚と直接接触すること)などにより感染するもので、性感染症に分類されます。症状のひとつである赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることからこの病名がついています。
しかし、治療を受けずに放置していると、原因菌が血行性全身に行き渡り、さまざまな臓器に障害を引き起こします。
かつては不治の病といわれていた
抗生物質が登場するまでは決定的な治療法が存在しなかったため、水銀やヒ素を用いたものなど現在では否定された治療が行われていた時代もありました。
このような時代には改善を認めないまま重症化するケースがほとんどでした。
ここ数年で感染者増加傾向
日本では1948年から梅毒の発生件数が集計されており、報告された患者数は、1967年の11000人を最多とし、その後何回かの小さな流行はあったものの、おおむね減少傾向にありました。
しかし、2010年以降は梅毒患者の報告数が増加に転じています。特に最近は、2013年の1228人から2018年の7007人へと、5年で6倍近くに急増しています。2019年、2020年は減少に転じたものの、依然として高い水準が続いています。
患者を年代別にみると男性は20代から40代まで幅広く、女性は20代が突出して多くなっており、若い世代を中心に梅毒の感染リスクが急速に高まっています。
症状は一時的に消えることがあるが自然治癒することはない
梅毒は早期の薬物治療を受けることに完治が可能な感染症です。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。
時に無症状になりながら進行するため、治ったことを確認しないで途中で治療をやめてしまわないようにすることが重要です。
また完治しても、感染を繰り返すことがあり、再感染の予防が必要です。
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梅毒の原因や感染経路
原因は梅毒トレポネーマ(treponema pallidum)という細菌です。
主な感染経路は、感染部位と粘膜・皮膚の直接の接触(接触感染)です。具体的には、性器と性器、性器と肛門(アナルセックス)、性器と口の接触(オーラルセックス)ですが、キスでも感染します。
梅毒の症状について
主な症状は皮膚の「しこり」や発疹ですが、後述しますように、感染(接触)後の経過期間により、症状や発現部位が変わってきます。
また、時期によっては症状が全くないこともあります。治療しないまま放置していると病気が進行します。
第1期症状(初期症状)
感染後3~6週間の潜伏期の後に感染部位(主に陰部、口唇部、口腔内、肛門など)に「しこり」ができることがあります。また、股の付け根の部分(鼠径部といいます)のリンパ節が腫れることもあります。
この時期は痛みがないことも多く、治療をしなくても症状は自然に軽快しますが、体内から病原体が消失したわけではないため、他人に感染させる可能性があります。
自身が感染した可能性がある場合には、この時期に梅毒検査を受けることが推移されます。
第2期症状(3ヶ月経過)
治療を受けないまま感染後3か月を経過すると、病原体が血液によって全身に運ばれ、手掌(手のひら)、足底(足の裏)などの皮膚や粘膜に赤い発疹が出ることがあり、これらは小さなバラの花に似ていることから「バラ疹(ばらしん)」という名で呼ばれています。これらの発疹もまた、治療を受けないまま放置していても数週間以内に消える場合があります。
その一方で、再発を繰り返すこともあります。しかし、第1期症状と同様、抗菌薬による治療をしない限り、原因菌である梅毒トレポネーマは体内に残存しているため、治癒することはありません。
なお、これらの皮疹はアレルギー、風しん、麻しんなどの症状と区別がつきにくいこともあり、この時期までに適切な治療を受けられなかった場合は、数年後の複数臓器の障害につながることがあります。
第3期症状(3年から10年経過)
感染後3年以上が経過すると、晩期顕症梅毒としてゴム腫と呼ばれる腫瘍が皮膚や筋肉、骨などに発生することがあります。
第4期症状 (10年以上末期症状)
感染後10年以上が経過すると、多くの臓器に腫瘍が発生したり、脳・脊髄・神経などが侵されることによる麻痺性認知症、脊髄瘻梅毒が発生したり、心血管症状、眼症状などが認められることもあります。
現代は検査と治療で3期や4期はほとんど見られない
現代では、このような病期にまで至ることは稀です。
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梅毒かな?と思った時はどうしたらいい?
性的接触の後、いつもと違う症状が現れるなどして、梅毒に感染しているか不安なときは、早めに医療機関を受診し、検査を受けましょう。
少しでも不安があれば検査
診察と血液検査(抗体検査)で診断することができます。地域によっては、保健所で匿名検査や無料検査を受けられるところもありますので、詳細は最寄りの保健所にお問い合わせください。
治療薬について
現在では抗菌薬を使用することにより治癒が期待できます。抗菌薬(抗生物質)の内服、もしくは、入院のうえ点滴することにより治療を行います。
処方された内服抗菌薬は、医師が治療終了と判断するまで確実に服用することが大切で、途中で止めてしまうと効果がありません。
なお、2022年1月には、厚生労働省の要請により、早期梅毒(第1~2期)では1回、後期梅毒では3回の筋肉注射だけで投与が完了できる抗菌薬も登場しました。
何科に行ったらいい?
男性の場合は泌尿器科、性病科、皮膚科、女性の場合は産婦人科、皮膚科、性病科を受診しましょう。
なお、検査結果を正確に判断するために、感染(が疑われる)機会の有無やその際の感染予防状況(コンドームの使用の有無など)について、医師に正確に伝えることが大切です。
また、梅毒に感染していたと分かった場合は、周囲で感染の可能性がある方(パートナーなど)にも医療機関の受診・検査を奨めましょう。パートナーも感染していた場合は、並行して治療を受けることが大切です。
梅毒の予防方法
梅毒の原因菌である梅毒トレポネーマ(treponema pallidum)は、傷口からの浸出液、精液、膣分泌液、血液などの体液に含まれており、これらが非感染者の粘膜や傷口などと直接接触することで感染します。感染経路の多くが、性器、肛門、口などの粘膜を介する性的な接触となっています。このことから、梅毒への感染を防ぐためには、コンドームを適切に使用し粘膜の直接の接触を避けるようにしましょう。避妊のためにピルは性感染症の予防には役に立ちません。
また、オーラルセックスやアナルセックスでは妊娠の可能性がないためコンドームを使わない方が多いかもしれませんが、使用しないままでは梅毒を含む性感染症のリスクになります。さらに、多数の相手と性的接触を持つと、感染する・させるリスクが高まります。
また、早期梅毒(第1~2期)の方が感染性の高い状態であること、再感染は何度でも起こりうること、梅毒感染による粘膜病変が存在するとHIVなどの他の性感染症にも感染しやすくなることも、併せて知っておきましょう。
家来るドクターでできる治療
前述のように、梅毒による皮疹はアレルギーなどの皮疹と区別がつきにくいこともありますが、心当たりのある場合などはご相談ください。
接触歴の問診や皮疹の診察などを通じて、医療機関を受診し検査を受けた方が良いか、アドバイスを行うことが可能です。
まとめ
梅毒は感染に気づきにくいこともあり、検査・治療の遅れや感染拡大につながりやすい感染症でもあります。
あなた自身のみならず、大切なパートナーを守るためにも、正しい知識を身につけ、必要に応じて医療機関を早めに受診しましょう。
※参考文献 政府広報オンライン https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201712/3.html
記事監修医師
糖尿病・内分泌内科 田中佑資
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