コロナとインフルの同時感染(フルロナ)とは?症状やワクチン予防について解説
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はじめに
こんにちは。西春内科・在宅クリニックの伊藤です。
みなさんは「フルロナ」あるいは「フルコビット」といった単語を耳にしたことはあるでしょうか?
名前からなんとなくイメージがわくかもしれませんが、この2つの単語は造語であり、「コロナウイルス感染症」と「インフルエンザ」の同時感染のことです。
考えるだけで恐ろしそうな状態ですが、正しい知識を持って対策をしていただくことが重要です。
今回は、この「フルロナ」についてわかりやすく説明します。
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目次
同時・二重感染(フルロナ)とはなにか
「フルロナ」という造語を聞くと、最近話題になった「デルタ(ミ)クロン」のことも思い浮かぶかもしれません。
「デルタ(ミ)クロン」は、コロナウイルスの「デルタ株」と「オミクロン株」の両方の遺伝子をもった“新種のコロナウイルス“のことでした。
「フルロナ」は遺伝子の変異のことを指しているのではなく、「コロナウイルス」と「インフルエンザウイルス」に同時に感染している状態のことを指した造語となります。
この造語は今年の1月ごろに海外で重複感染した報告が出たため話題となりました。
しかし、実はもっと前から重複感染を起こしていたと思われます。
たとえば、コロナウイルスが最初に発見された中国の武漢で307人のコロナウイルス患者を調査したところ、そのうちの57%もの患者がインフルエンザウイルスに重複感染していたという報告がされています。1)
また、イギリスで1年半以上にわたって約7000人の患者のコロナウイルス感染症患者を調査したところ、約3%の患者がインフルエンザウイルスに感染していたことが判明しています。2)
同じ研究で、RSウイルスの重複感染は3%に、アデノウイルスの重複感染は2%に起こっていますので、「インフルエンザ」だけが重複感染するわけではないことも知っておいてほしいです。
コロナウイルス感染症(オミクロン株)とインフルエンザの違い
コロナウイルス感染症とインフルエンザは“上気道(のどや気管)に感染するウイルス“という点では同じですが、ウイルスの特徴や症状は少し異なります。その違いについて説明します。
潜伏期間の違い
コロナウイルスとインフルエンザウイルスでは潜伏期間と、排菌期間(他人に感染させる可能性がある期間)が異なります。
コロナウイルスでは潜伏期間が6日、ウイルス排菌期間が最大17日であるのに対し、インフルエンザは潜伏期間が2日、ウイルス排菌期間は3日と非常に短いです。
このように、コロナウイルスとインフルエンザウイルスは潜伏期間と排菌期間が全く異なります。
流行時期の違い
コロナウイルスとインフルエンザの週ごとの発生数を年別にグラフにしてみると、コロナウイルスは季節にかかわらず増減していることがわかります。
一方でインフルエンザは11月〜2月ごろの冬場に多く、夏場にはほとんど発生することはありません。
コロナウイルスは発生時期を問わず、数か月毎に増減しています。
インフルエンザは冬場には多いですが、夏にはほとんどみられません。
コロナウイルス感染症(オミクロン株)の症状
コロナウイルス感染症の症状としては
- 発熱
- 空咳
- 頭痛・倦怠感
- 息切れ
- 関節痛
- 味覚、嗅覚障害
- 嘔吐、下痢
などがみられます。
特に息切れといった強い呼吸器症状や味覚、嗅覚障害を起こすことは特徴的です。
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インフルエンザの症状
インフルエンザの症状としては
- 発熱
- 空咳
- 頭痛、倦怠感
- 関節痛
などがみられます。
なんだかコロナとほとんど一緒ですね・・・。
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同時に感染するとどうなるの?
同時に感染を引き起こした場合はどうなるのでしょうか。日本ではおそらく発生しておりませんので、海外での事例をもとに解説いたします。
コロナウイルス感染症患者全体の0.6%にインフルエンザへの感染があったのに対して、重症患者では2.2%にインフルエンザへの感染があったと報告されています。5)また、動物実験ではありますが、コロナウイルスとインフルエンザの重複感染は単独感染に比べて肺の損傷が大きかったと報告されています。6)
たった2つの研究結果だけで、“同時感染=重症化リスク“とすることは間違っていると思いますが、“同時感染しない方がよさそうだ“とは思います。
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同時に感染する確率・しやすい人の特徴
こちらも先ほどと同様、海外の事例をもとに解説いたします。
ある研究では成人の重複感染率は0.3%であったのに対して、小児では2.2%と約7倍も感染リスクが高かったと報告しました。5)
ここからは私の考えになりますが、同時感染を考えるうえで2つの現象を考えないといけないと考えます。
- 海外では重複感染がみられているが日本ではみられていない
- 成人に比べて小児が感染しやすい
この現象は何が原因なのでしょうか?
海外のテレビ中継を思い出してみてください。「マスクしなくてよくなった」とか「数万人の観客の試合があった(もちろんビール片手ですね)」などという、感染対策の緩和がみられます。
また、子供は大人に比べれば(皆さん本当に頑張って対策していると思いますが)感染対策への理解力も低く、マスクを正しく着用していない状況がみられます。
つまり、感染対策の弱さが重複感染のリスクとなっているのではないかと私は考えています。
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予防・ワクチン接種について
適切な予防接種・ワクチン接種の回数
インフルエンザに対してはインフルエンザワクチンが、コロナウイルス感染症に対してはコロナワクチンが有効です。
インフルエンザワクチンは小学生までは年2回、成人では年1回の接種を推奨しています。また、現状ではコロナワクチンは3回目までの接種、高齢者や基礎疾患がある方は4回目までの接種を推奨しています。
コロナの予防接種はインフルエンザに有効?
残念ながら、コロナウイルスとインフルエンザウイルスは異なるウイルスです。
コロナワクチンによってできる免疫はインフルエンザを抑制することはできませんし、逆も同じくインフルエンザワクチンによってできる免疫でコロナウイルスを抑制することはできません。
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病院での検査と治療について
検査方法について
インフルエンザは以前から行われている「抗原検査」にて検出することができます。
コロナウイルスは「抗原検査」あるいは「PCR検査」で検出することができます。
ウイルスが多く存在する咽頭(鼻の奥)に綿棒を入れて擦り取ることでウイルスを採取し検出します。PCR検査の場合は唾液を用いても検出することが可能となります。
治療について
インフルエンザに対してはタミフル®︎やリレンザ®︎、イナビル®︎などといった抗インフルエンザ薬が用いられます。
一方で、コロナウイルスに対してはラゲブリオ®︎やゼビュディ®︎などといった抗コロナウイルス薬が用いられることがあります。
軽症の場合は自宅で経過をみることが可能ですが、呼吸状態が悪い場合は入院が必要となり、さらにひどい場合は人工呼吸器などにつないで呼吸を補助する必要がでてくる可能性があります。
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日頃からできる予防・対策法
先ほどのコロナウイルス感染症とインフルエンザの発生者数をもう一度見てみましょう。
今回はコロナウイルスが感染し始めた2020年から経時的にひとつのグラフにしてみました。
このグラフを見るうえで一つだけ注意点があります。
インフルエンザは定点観測といわれて、定点として指定された医療機関からの届出を受けてその発生数を測定しています。
簡単に説明すると、流行の把握はできますが、ほかの感染症と感染者数を比べてはいけません。
コロナウイルスが見つかった2020年以降、インフルエンザの報告数がほとんど見られなくなっていることがわかると思います。
コロナウイルスが流行しはじめてから、皆さんが気をつけて行ってきた“マスク”、“手洗い”、“うがい”、“消毒”、“三密の回避”、これらの行動によってインフルエンザが流行することはほとんどなくなりました。
つまり、今までのコロナ対策を引き続き意識することがインフルエンザの予防につながり、重複感染症の予防となります。
また、感染や重症化のリスクを下げることができるワクチン接種は非常に有効となります。「よくわからないから、コロナワクチンは嫌!!」という方は、インフルエンザワクチンだけでも良いので接種することをおすすめします。
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病院や家来るドクターでできる治療
大きな病院では診断、治療、入院による高度な治療も行うことができます。
家来るドクターではコロナウイルス抗原検査・PCR検査、インフルエンザウイルス抗原検査を持って往診をしますので、診断を行うことができます。
また、抗インフルエンザ薬については処方が可能です。呼吸状態(酸素飽和度)も調べることができますので、病院を受診した方が良いか、自宅で経過をみることができるかの判断をおこなうことが可能です。
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まとめ
少し難しいお話も出しましたが、「フルロナ」について理解いただけましたでしょうか。
重複感染は日本では未知の状態ですので、怖い気持ちもあるかと思います。
何度もお話ししているように
“マスク”、“手洗い”、“うがい”、“消毒”、“三密の回避”といった、感染対策を行うことはとても効果的な感染予防となります。
そろそろ感染対策に疲れてきたという方も多いとは思いますが、特に冬になるにかけてはインフルエンザの予防も必要ですのでいま一度、感染対策を徹底していただきたいです。また、可能であればインフルエンザワクチンの接種をおねがいいたします。
参考文献:
1)The epidemiology and clinical characteristics of co-infection of SARS-CoV-2 and influenza viruses in patients during COVID-19 outbreak. J. Med. Virology. 2020;92:2870–2873.
2)SARS-CoV-2 co-infection with influenza viruses, respiratory syncytial virus, or adenoviruses. Lancet. 2022;399:1463-1464.
3)厚生労働省ホームページ、新型コロナウイルス感染症について(https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/open-data.html) オープンデータを基に作成
4)厚生労働省ホームページ、インフルエンザの発生状況(https://www.mhlw.go. jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou.html) オープンデータを基に作成
5)Co-infection of SARS-CoV-2 and influenza viruses: a systematic review and meta-analysis. J Clin Virol Plus. 2021; 1: 100036.
6)Coinfection with influenza A virus enhances SARS-CoV-2 infectivity. Cell Res. 2021; 31:
395- 403.
監修医師:
西春内科・在宅クリニック 伊藤医師