新型コロナ感染症の治療薬【経口抗ウイルス薬(飲み薬)ラゲブリオ・パキロビッド・ゼビュテイ】について
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2019年以降、中国の武漢からパンデミックとなった新型コロナウイルス(COVID-19)。その後も、デルタ株やオミクロン株、ステルスオミクロン株(BA.2)など様々な変異株が登場し、終息の目途は立たない状況が続いています。令和4年3月からは新型コロナワクチン3回目接種が始まりましたが、ワクチンを打ったからといって100%感染を防げるわけではなく、とても厄介な感染症といえます。
そんな中、期待されているのが新型コロナの治療薬開発です。現在、世界中の研究機関や製薬企業が臨床試験を実施しており、日本でもいくつかの治療薬が承認されています。
今回は、新型コロナの治療薬についてまとめました。
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目次
オミクロン株の治療法は?
オミクロン株の治療については画期的なものはまだわかりません。抗体カクテル療法・モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)などの経口薬がありますが、確立した治療はまだ見つかっていないのが現状です。
【関連記事】家来るドクターでは、自宅療養者への健康観察・処方薬による対症療法を行っております。
オミクロン株の治療薬には何がある?
以下は、主な国内の承認済新型コロナ治療薬一覧です。
販売名(成分) | 製造・販売業者 | 分類 | 対象者 |
---|---|---|---|
ベクルリー点滴静注用 (レムデシビル) | ギリアド・サイ エンシズ | 抗ウイルス薬 | 軽症~重症 |
デカドロン錠等 (デキサメタゾン) | 日医工 | 抗炎症薬 | 重症感染症 |
オルミエント錠 (バリシチニブ) | 日本イーライリ リー | 抗炎症薬 | 中等症Ⅱ~重症 |
ロナプリーブ注射液セッ ト (カシリビマブ・イムデ ビマブ) | 中外製薬 | 中和抗体薬 | 軽症~中等症Ⅰ・発症抑制 |
パキロビッドパック (ニルマトレルビル・リ トナビル) | ファイザー | 抗ウイルス薬 | 軽症~中等症Ⅰ |
ゼビュディ点滴静注液 (ソトロビマブ) | GSK | 中和抗体薬 | 軽症~中等症Ⅰ |
ラゲブリオカプセル (モルヌピラビル) | MSD | 抗ウイルス薬 | 軽症~中等症Ⅰ |
アクテムラ点滴静注 (トシリズマブ) | 中外製薬 | 抗炎症薬 | 中等症Ⅱ~重症 |
オミクロン株治療薬「経口抗ウイルス薬」とは?
経口抗ウイルス薬とは経口抗ウイルス薬とは、新型コロナウイルス感染症に患者に投与できる飲み薬のことを指します。現在様々な治療薬の研究が進み、令和3年12月24日に重症化予防のための抗ウイルス薬「モルヌピラビル」(販売名:ラゲブリオ)が許可されて、令和4年2月10日には「ニルマトレルビル・リトナビル」(販売名:パキロビッド)が特例承認されました。現状、安定的な入手が可能になるまでは一般流通は行われず、厚生労働省が所有した上で、対象となる患者が発生した医療機関及び薬局からの依頼に基づき、 無償で譲渡されることになっております。
オミクロン株の治療薬の種類と有効性
(COVID-19に対する薬物治療の考え方 第13版より転載)
- 中和抗体薬(ウイルスや細菌を排除し、感染を防ぐ):カシリビマブ/イムデビマブ(ロナプリーブ)、ソトロビマブ(ゼビュディ)
- 抗ウイルス薬(ウイルスの増殖を抑える):モルヌピラビル(ラゲブリオ)、レムデシビル(ベクルリー)、ニルマトレビル/リトナビル(パキロピッド)
- 免疫調整薬・免疫抑制薬:デキサメタゾン、バリシチニブ、トシリズ マブ
このうち、ラゲブリオ、パキロピッドはオミクロン株にも効果が期待されております。順番に詳しく解説していきましょう。
①モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ®)(米国で緊急使用許可が出た「モルヌピラビル」メルク提供)ラゲブリオは軽症者に用いられる経口の治療薬です。新型コロナ感染症の重症リスクのある軽症~中等症の方に投与されます。
臨床試験では、症状発現から5日以内の患者が投与開始後29日目までの入院と死亡のリスクが30%減少しました。
ラゲブリオは動物実験で催奇形性などが認められており、妊婦または妊娠している可能性のある女性は服用できません。
主な副反応は、下痢・悪心・めまい・頭痛などがあります。
投与の対象となるのは、次の条件を満たす方で1日2回5日間投与します。
基本条件(全て満たす)
- 投与の時点で発症日から5日以内
- 18歳以上
- 妊婦又は妊娠している可能性がない
- 1日2回5日間
- 腎機能・肝機能に障害
+
部分条件(次のいずれかの重症化リスク因子を有する)
- 60歳以上
- BMI 25kg/m2 超
- 喫煙者(過去 30 日以内の喫煙があり、かつ生涯に 100 本以上の喫煙がある)
- 免疫抑制疾患又は免疫抑制剤の継続投与
- 腎機能・肝機能に障害
- 慢性肺疾患(喘息は、処方薬の連日投与を要する場合のみ)
- 高血圧の診断を受けている
- 心血管疾患
- 1 型又は 2 型糖尿病
- 限局性皮膚がんを除く活動性の癌
- 慢性腎臓病
- 神経発達障害(脳性麻痺、ダウン症候群等)又は医学的複雑性を付与するその他の疾患(遺伝性疾患、メタボリックシンドローム、重度の先天異常等)
- 医療技術への依存(SARS-CoV-2 による感染症と無関係な持続陽圧呼吸療法等)など
②ニルマトレルビル・リトナビル(商品名:パキロビッド®)(米ファイザー製の新型コロナウイルス治療薬「パクスロビド」=ロイター)パキロビッドは令和4年2月10日に特例承認された、新型コロナに対す最新の飲み薬です。他の薬と同様に、重症リスクのある軽症~中等症の方に投与されます。国際共同第2/3相EPIC-HR試験では、入院または死亡のリスクを88%低下させました。現段階では、モルヌピラビルと比べると非常に高い重症化予防効果ということになります。主な副作用として味覚不全・下痢や軟便・中毒疹・肝機能障害などありますが、いずれも低確率であり、あまり強い副作用ではありません。投与の対象となるのは、次の条件を満たす方で1日2回5日間投与します。
基本条件(全て満たす)
- 投与の時点で発症日から5日以内
- 18歳以上
- 妊婦又は妊娠している可能性がない
- 1日2回5日間
+
部分条件(次のいずれかの重症化リスク因子を有する)
- 60歳以上
- BMI 25kg/m2 超
- 喫煙者(過去 30 日以内の喫煙があり、かつ生涯に 100 本以上の喫煙がある)
- 免疫抑制疾患又は免疫抑制剤の継続投与
- 腎機能・肝機能に障害
- 慢性肺疾患(喘息は、処方薬の連日投与を要する場合のみ)
- 高血圧の診断を受けている
- 心血管疾患
- 1 型又は 2 型糖尿病
- 限局性皮膚がんを除く活動性の癌
- 慢性腎臓病
- 神経発達障害(脳性麻痺、ダウン症候群等)又は医学的複雑性を付与するその他の疾患(遺伝性疾患、メタボリックシンドローム、重度の先天異常等)
- 医療技術への依存(SARS-CoV-2 による感染症と無関係な持続陽圧呼吸療法等)など
しかし、パキロピッドは併用できない薬が約40種類あるので、投与の際は更に慎重にならなければなりません。併用禁忌薬には、片頭痛、関節リウマチ、高脂血症、高血圧、脳卒中、不眠症、不整脈、狭心症、結核、神経症に関わる薬があります。
(キニジン、ベプリジル、フレカイニド、プロパフェノン、アミオ ダロン、ピモジド、エルゴット誘導体、PDE5 阻害薬、アゼルニジピン、リバーロキサバ ン、ジアゼパム、クロラゼプ酸、エスタゾラム、フルラゼパム、トリアゾラム、ミダゾ ラム、ルラシドンなどがあり、詳しくはこちらを参照)
開発中の型コロナ治療薬は?
①イベルメクチン
イベルメクチンは「興和」が寄生虫薬として国内で承認を受けている経口抗ウイルス薬です。軽症~中等症Ⅰの方が対象です。しかし、ブラジルの研究グループにより、「イベルメクチン」は新型コロナの発症後すぐに投与しても、症状が悪化して入院に至るリスクを下げる効果が認められなかったと発表されています。現在も興和により軽症の患者を対象とした国内第Ⅲ相試験を実施されています。
②S-217622
S-217622は「塩野義製薬」が開発中の経口抗ウイルス薬です。無症候、軽症~中等症Ⅰの方が対象です。現在、無症候及び軽症から中等症までの患者を対象とする国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験が実施されています。R4.2.25に国内の製薬会社が開発する初めての飲み薬として厚生労働省に薬事承認を申請されました。この飲み薬は、後藤厚生労働大臣が薬事承認が行われることを前提に、100万人分を購入し、それ以降も一定数量を購入することで基本合意したと発表されました。
関連記事:新型コロナワクチンは何種類?ノババックスとは?4社徹底比較!副反応やオミクロン株への効果の違いも解説
新型コロナ治療薬の処方方法
新型コロナの治療薬は、発熱外来を行うクリニックや病院などの医師が重症化リスクのある新型コロナ感染症の患者で投与が必要と判断した場合に処方されます。医師が処方箋を新型コロナの治療薬を扱う薬局に送付し、薬局が患者の自宅に配送することで処方されます。
まとめ
ここまで、新型コロナの治療薬について解説してきました。新型コロナに感染した時のために治療薬には何があるのか覚えておくのもよいでしょう。しかし、まずはかからないようにワクチンや感染対策などをして感染しないように努めることも重要です。引き続き、感染予防対策をお願いいたします。万が一、発熱・咳など新型コロナウイルスの症状が出たり、濃厚接触者になった場合は、お気軽に家来るドクターへご相談ください。家来るドクターでは、ご自宅で新型コロナの検査が可能です。必要であれば、お薬の処方や陰性証明書の発行もその場で可能です。
また、家来るドクターでは新型コロナウイルス陽性で自宅療養している方や濃厚接触者として認定されて自宅療養中の方への往診もしております。何かお困りのことがあればお気軽にご相談ください。
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参考文献リスト
・沖縄県新型コロナウイルス感染症対策本部・SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)について(第5報)・SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation・健康・医療「人との接触を8割減らす、10のポイント」を公表しました
この記事の監修医師
西春内科・在宅クリニック 福井 康大院長プロフィールはこちらを参照してください。