トリコモナスになる原因と症状は?においの特徴や検査方法について解説
投稿日: 2022年08月04日 | 更新日: 2024年08月03日
みなさん、トリコモナスを聞いたことはありますか。
カンジタと比べて馴染みのない方も多いかもしれません。
トリコモナスとは性感染症の1つです。
性感染症(略称:STD)は、いわゆるセックスをはじめとする性行為などによって感染する病気のことを総称して指します。
性感染症は、治療が遅れるほど治りにくくなるため、早期発見、早期治療が大切です。
トリコモナスは男女で寄生部分が異なる事が知られております。
男性の場合:前立腺や精嚢、尿道部位に寄生 女性の場合:膣内や子宮頸管、膀胱や尿道に寄生 |
今回は、男女別にトリコモナスの症状やカンジダ症との違いについて解説します。
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目次
トリコモナスとは
トリコモナスは、先述した通り性感染症の1つで、肉眼で見分けることができない原虫(微生物)が性器内に侵入して、女性では膣炎や膀胱炎、男性では尿道炎を引き起こして、患部の痛みやかゆみの症状が出現すると指摘されています。
近年においてはその感染者は減少傾向にあって、中高年者層でしばしば認められるのが特徴のひとつです。
自覚症状に乏しいこともあり、感染していても症状が出ないという感染者の割合は、約20%から半数程度存在すると考えられています。
有意な症状に気がつかずに放置されるケースが多いですが、治療せずに経過してしまうと、病状は悪化するばかりで通常では自然に治癒することはありません。
感染状態が継続すると、不妊や流産の原因となるために適切な治療を実施する事が重要です。
関連記事:クラミジアは男性も女性もかかる?潜伏期間や感染経路、症状や治るまでの期間について
膣トリコモナス症(女性)
トリコモナスは、世界的にはいまだに感染者数が多い感染症のひとつですが、わが国では減少傾向を認めています。
女性のおりものの性状が異常をきたしてトリコモナス原虫が検出されることも少なくなっています。
しかし、一般的に膣トリコモナス症の場合には、おりものの形状やそのにおいに特徴があり、診断がつきやすいと言われています。
一般的に、潜伏期間は女性の場合には5日~14日前後と言われています。
主な症状としては、
- あわ状の悪臭の強いおりものが増加する
- 外陰部や腟部に痛みや強いかゆみ、掻痒感
などを自覚します。
トリコモナスは、腟以外にも子宮の子宮頸管入口部、膀胱や尿道へも感染所見が波及します。
トリコモナス感染症(男性)
トリコモナス感染症は男性の場合には、尿道に感染して尿道炎の症状を引き起こしますが、一般的には無症状で経過することも比較的多いと言われています。
一般的に、潜伏期間は男性で10日前後であることが知られています。
主な症状としては、
- 尿道からの膿汁の分泌物
- 排尿時の痛み
を自覚します。
尿道感染のみのケースでは、排尿行為によって原虫が洗い流されることが考えられます。
しかし、トリコモナスに感染している男性の前立腺や精嚢部に寄生虫が存在していることが多く、尿道炎や前立腺炎に発展することが懸念されています1)。
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心当たりがない!トリコモナス症の感染経路は?
トリコモナス症は、基本的に性行為(セックス)によって感染が成立します。
女性の場合は腟や子宮入口部、男性の場合では前立腺や精嚢に寄生しているトリコモナス原虫が、性行為を通じて精液や腟分泌液を介して感染します。
主な感染経路は性行為ですが、時に心当たりがないのに感染するケースが考えられます。
トリコモナス症は、下着やタオルに接触したり、風呂やプールなどの場所から感染したりする可能性もあり、性行為の経験がない場合や幼児にも感染することがあります。
関連記事:おりものが臭う、量や色に違和感・異常を感じたときに考えられる病気とは
トリコモナスとカンジダ症との違いについて
カンジダ症とは、カンジダ菌と呼ばれる真菌によって様々な炎症が引き起こされる疾患であり、カンジダ菌そのものは皮膚や消化管に広く常在していると考えられています。
過度の疲労、免疫抑制剤やステロイド剤の服用が長期になれば、自然と免疫力が低下して、腟内における常在菌のバランスが崩れ、腟内カンジダ菌が増殖します。
カンジダによる腟炎では、外陰部や腟部の掻痒感(かゆみ)や帯下(おりもの)の増加が認められています。
酒粕様やヨーグルト様と表現されるような帯下(おりもの)が特徴的です。
一方で、トリコモナス症は、トリコモナス原虫による感染によって引き起こされる疾患であり、腟内のグリコーゲンを消費して腟内善玉菌を減少させます。
トリコモナスによる腟炎は、主に性行為で感染します。
浴槽や便器などからも感染する可能性がありますし、患者自身の子宮頚管に長期的に潜んでいて、免疫力が低下した際に再発するパターンも考えられます。
トリコモナスによる腟炎の場合には、泡沫状の黄色から白色の帯下(おりもの)が特徴的です。
帯下(おりもの)を顕微鏡で観察した結果、トリコモナス原虫が発見されれば確定的な診断に繋がります。
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トリコモナスは 放置せずに病院で検査を
性感染症は早期治療が鍵です。上記であげたようなトリコモナスの症状を認めましたら速やか病院を受診するようにしましょう。
さて、病院で可能なトリコモナスの検査にはどのようなものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
トリコモナスの検査
トリコモナスの検査は男女によって異なります。
【男性の場合】
男性には、尿の採取を行います。
その結果は検査してから5日〜7日後に判明します。
男性のケースでは、検査の精度が安定しません。
パートナーの感染が認められた場合などは、問診した結果として疑わしいければ積極的に治療を優先して実施します。
【女性の場合】
女性では、膣分泌物を綿棒で拭って検体を採取して検査します。
感染が成立してから24時間以上経過すれば、検査精度が高くなります。
また、専門機器を備えた限られた医療機関では、即日に精密検査をして結果が当日または翌日に判明する遺伝子による核酸増幅法を用いた検査手段もあります。
トリコモナスは自然治癒する?
トリコモナスに一度感染すると、残念ながら自然治癒は期待できません。
一般的には、トリコモナス症に対する治療薬である「抗原中剤」を使用しないと、トリコモナス原虫は死滅しません。
トリコモナスに感染したままで放置していると、女性では卵管炎や骨盤内感染症に罹患する恐れがあります。
また、男性の場合には症状が悪化すると、前立腺炎や精巣上体炎を引き起こしてしまうかもしれません。
精子の通り道が詰まると不妊症の直接的な原因になることも想定されますので、病院やクリニックを受診して適切な治療を受けるようにしてください。
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トリコモナスに効く市販薬は?
トリコモナスに対する治療に際して重要なことは、パートナーと同時期に受診して確実に治療薬を服用することです。
治療方法は主に飲み薬のフラジール経口薬を1回1錠(250mg)1日2回、10日間続けて内服します。
フラジールは市販薬ではありません。
原虫のDNAを破壊して生命活動を阻害する有効成分を含有した薬剤です。
本邦では法律上、医師による処方箋が必要ですので、通常は病院を受診しなければ手に入れることができません。
抗原虫剤を服用している際は、アルコール摂取は悪心・嘔吐、腹痛などの症状が強まりますので基本的には禁物です。
関連記事:陰部や性器のかゆみがある時の性病について|検査や治療方法もご紹介
病院や家来るドクターでできるトリコモナスの治療
【病院】
病院や診療所などで実行できる治療としては、トリコモナス症の病原体は原虫であるために治療としては抗原虫薬を用います。
特に、女性の場合には妊娠中の際に、経口薬は胎児に影響を与える可能性が考慮されるために使用できません。
そこで、膣にフラジールの薬剤を挿入して治療を実践します。
通常では、外陰部のかゆみなど自覚症状が改善して、腟トリコモナスが消失した確認を行うことで治癒状態であると認定します。
【家来るドクター】
夜間や休日などにトリコモナス疑いの症状で困った際には、お気軽に家来るドクターにご連絡ください。
連携医療機関の医師が適切な対処法をご案内いたします。
往診が必要となった場合、医師がご自宅にお伺いし、診察します。
早期診断を行い、治療薬の処方が可能なため患者様の予後がよくなると考えております。
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まとめ
最近の性感染症は自覚症状がないものも多く、知らないうちにお互いに感染することもあります。
新しいパートナーができたら、まずお互いに感染症のチェックをしましょう。
正しい予防策でお互いの信頼関係をなお一層深めるように心がけてください。
性感染症のひとつであるトリコモナス症を治療する際には、症状が無くなったからと言って治療を自己判断で中断しないようにしましょう。
医師から「完治した」と言われるまで、確実に治療を続けることが大切です。
そしてパートナーも一緒に検査を行い、必要があれば治療を受けましょう。
不特定多数との性行為は避けて、性交する際にはコンドームの着用を正しく行ないましょう。
また、月経中はトリコモナスが繁殖しやすい環境であるため、生理中に濃厚接触することも出来る限り控えましょう。
時に、濡れたタオルを共有することやお風呂やプールに一緒に入ることでトリコモナス症に感染するケースもありますので、出来るだけ共有物を持たないように注意しましょう。
今回の記事の情報が少しでも皆様の参考になれば幸いです。
参考文献
1)STD研究所HP:トリコモナスの解説
DOI https://www.std-lab.jp/stddatabase/trichomonas-vaginalis.php
2)GOETHE泌尿器科HP:トリコモナス症について|症状・感染経路・治療方法などを解説
DOI https://goethe.clinic/std/venereal/trichomonas-2/
執筆者
プロフィール
平成19年に現大阪公立大学医学部医学科を卒業。初期臨床研修修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科勤務、平成26年より国家公務員共済組合連合会大手前病院で勤務、令和3年より同院救急科医長就任。どうぞよろしくお願い致します。
専門分野
救急全般(特に敗血症、播種性血管内凝固症候群、凝固線溶異常関連など)、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域
保有資格
日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医、日本救急医学会認定ICLSコースディレクター、厚生労働省認定緩和ケア研修会修了医、厚生労働省認定臨床研修指導医など
経歴
- 三重大学医学部医学科 卒業
- 四日市羽津医療センター
- 西春内科・在宅クリニック
- 千葉内科・在宅クリニック 院長