陰部や性器のかゆみがある時の性病について|検査や治療方法もご紹介
投稿日: 2022年06月29日 | 更新日: 2024年11月13日
西春在宅・往診クリニック医師の伊藤です。
先月は性感染症について書かせていただきましたが、今月も引き続き性感染症に関連した内容をお届けします。
「陰部がかゆい」と感じた事はありませんか?
恥ずかしくて友人、パートナー、家族にはなかなか相談できませんよね。
その「かゆみ」、もしかしたら気づかないうちに感染していた性感染症かもしれません。
今回は、陰部の「かゆみ」の原因や症状、治療法などについて、簡単にわかりやすく解説していきたいと思います。
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目次
かゆみが生じる原因について
陰部のかゆみには大きく分けて感染症と炎症(皮膚炎)の2つがあります。
感染症は、細菌、ウイルス、真菌(カビ)などといった病原体に感染する事で発生します。
陰部に発生する感染症の多くは性行為を介して感染することが多く、性感染症(性病)と呼ばれます。
陰部は特に粘膜に近いことや蒸れやすいことから、細菌、ウイルス、真菌が繁殖しやすい部位です。
一方で炎症は、以下の理由などで皮膚に刺激が起こることで発生します。
- 下着による締め付け
- 下着のこすれ
- 陰部の蒸れ
- 女性であれば生理用ナプキンとの接触
関連記事:おりものが臭う、量や色に違和感・異常を感じたときに考えられる病気とは
参考記事:フェムケアのやり方は?更年期に実践すべき膣マッサージの方法を紹介|Humming
考えられる性病の種類
陰部のかゆみを引き起こす感染症について簡単に説明します。
それぞれの感染症については別の記事にて詳しく説明していますので気になる方はリンク先もチェックしてください。
クラミジア
クラミジア・トラコマティスという細菌による感染症です。
日本で最も多い性感染症です。
感染しても無症状な方も多いですが、陰部のかゆみや痛みを引き起こすことがあります。
さらに症状が進むと男性では尿道炎、精巣上体炎(*1)を引き起こす原因になります。
女性では子宮頸管炎、骨盤腹膜炎などを引き起こし、不妊の原因となる可能性があります。
精巣上体炎(*1)=精巣上体は精巣(睾丸)の横にある器官で、そこに細菌が入り込み、炎症を起こす病気 |
梅毒
梅毒トレポネーマという細菌による感染症です。
減少傾向にある感染症でしたが、近年になり増加傾向にある感染症です。
感染した場合、陰部のかゆみやしこりから始まり、その後バラ疹と呼ばれる特徴的な赤い発疹が出現します。
さらに放置すると脳や心臓に障害を起こす可能性があります。
トリコモナス
膣トリコモナスという原虫(寄生虫)による感染症です。
男性は尿道炎、女性は膣炎や膀胱炎を引き起こします。
放置すると不妊のリスクとなります。
>>トリコモナスになる原因と症状は?においの特徴や検査方法について解説
ヘルペス
単純ヘルペスウイルスというウイルスによる感染症です。
およそ10−20%の人が感染しています。
感染しても無症状のことが多いです。
しかし、多発性で1cm程度の小さな水疱(水ぶくれ)や潰瘍を引き起こします。
慢性化したり、繰り返し感染したりすることが特徴的です。
>>ヘルペスはうつるの?原因や症状、治し方や口唇・性器ヘルペス・帯状疱疹について
カンジダ
カンジダ属という真菌(カビ)の仲間による感染症です。
女性の5人に1人が発症するとされています。
女性が感染した場合、カッテージチーズ様・ヨーグルト様といわれる特徴的なおりものの異常が見られます。
男性では亀頭からの白い粕状の分泌物が見られるのが特徴です。
慢性化すると全身感染症となります。
また、妊娠出産時に新生児に感染する産道感染を引き起こす可能性があります。
>>女性に多いカンジダ症ってどんな病気?男女別の症状や原因、治療について
いんきんたむし(股部白癬)
白癬菌(はくせんきん)という水虫の原因となる真菌(カビ)による感染症です。
比較的男性に起こりやすいです。
性器ではなく、その周囲の大腿部を中心に皮疹とかゆみが起こり広がっていきます。
性行為だけでなく、皮膚片やシーツ、タオルなどを介して周囲に容易に感染を引き起こすため注意が必要です。
>>いんきんたむし(股部白癬)ってうつるの?原因や湿疹との見分け方について
毛ジラミ症
毛じらみという1mm程度の小さな吸血生昆虫が陰毛に感染することで起こります。
吸血する際に強いかゆみを引き起こします。
尿道炎、精巣上体炎を引き起こす場合もあります。
性行為だけでなくシーツ、タオルなどを介して感染するため注意が必要です。
>>毛じらみの原因や症状、肉眼での見つけ方などについて解説!放置すると危険?
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その他の症状について
例えば、湿疹などは感染症によって起こる症状ではありません。
感染症ではありませんが、陰部にかゆみを引き起こし性病と勘違いすることもある病態について説明していきます。
一般的に、かぶれといわれている外部からの刺激によって皮膚が炎症を起こしている状態です。
刺激の原因は以下などです。
・皮脂
・汗
・蒸れ
・乾燥
・女性の場合、ナプキンやタンポンのひもの接触
・経血に伴う蒸れ
また、衣服やコンドームなどに対するアレルギー反応が原因となって発生する場合もあります。
陰部だけでなく頭皮、脇などの皮脂が分泌されやすい部位によく見られる疾患です。
皮膚にいるマラセチア(*1)が皮膚を刺激してかゆみを伴う皮疹を引き起こします。
マラセチア(*1)=常在菌が皮脂を食べて分解してできた物質
更年期以降の女性に発生する独特な症状です。
膣粘膜の萎縮や乾燥が起こることでかゆみや痛みを引き起こします。
原因としては閉経に伴う女性ホルモンの低下と考えられています。
また、かゆみに伴って痛みも生じる場合があります。
どのような時に痛みが出るかで、ある程度原因をしぼることができます。
陰茎・陰嚢(いんのう)・外陰部痛 |
特に何もしていなくても、あるいは衣服と擦れることでも痛みを生じます。 男性では陰茎や陰嚢、女性では外陰部や膣に対する感染や炎症が考えられます。 クラミジア、ヘルペス、トリコモナス、カンジダなどへの感染です。 |
排尿時痛 |
排尿した際に痛みを感じます。 尿道や膀胱への感染が原因と考えられます。 クラミジア、ヘルペス、トリコモナスなどへの感染です。 |
性交時痛 |
性交渉時に痛みを感じます。 膣への感染や炎症が原因と考えられます。 クラミジア、トリコモナス、カンジダなどへの感染です。 感染以外の原因としては萎縮生膣炎の可能性が考えられます。 |
腹痛(下腹部痛、上腹部痛) |
女性がかゆみに加えて、生理痛とは異なる痛みを感じた場合は特に注意が必要です。 性感染症に気付かない、あるいは治療されないまま経過していった場合に感染がお腹の中に広がっていくことで起こります。 専門的には骨盤腹膜炎やFitz-Hugh-Curtis症候群などと呼ばれます。 不妊の原因となることや手術を要することもあります。 |
関連記事:女性がなりやすい膀胱炎の原因や症状、知っておきたい予防法と治療について
心当たりがない?性行為をしていなくても性病になるの?
先ほど説明した以下の7つの感染症はいずれも性行為にて感染を引き起こします。
- クラミジア
- 梅毒
- トリコモナス
- ヘルペス
- カンジダ
- 股部白癬(こぶはくせん)
- 毛ジラミ症
ほとんどの感染症はコンドームを使用することで予防できます。
しかしながら、白癬菌や、毛じらみはコンドームでは予防できません。
同じベッドで寝ているだけ、感染者と入浴しただけでも感染してしまう可能性がありますので、注意が必要です。
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病院での検査と治療について
診察では、主に視診と問診をおこないます。
陰部を見せることや、性交渉歴を話す事は恥ずかしいと感じることがあるかもしれません。
しかし、診断するためには必要なことですので、正しい情報を伝えてください。
検査では分泌物や剥がれている皮膚の一部を採取します。
採取した皮膚の一部を顕微鏡で調べたり、培養して菌を増やしたりすることで原因を特定します。
また、採血をすることで感染が判明する感染症もあります。
治療については、以下の治療薬があります。
- 点滴
- 飲み薬
- 膣剤
- 塗り薬
それぞれの疾患に対して使用される薬剤は異なります。
自己判断で以前と同じ薬を使うことは治療効果が全く見られない可能性もあります。
必ず病院を受診して診断をつけてください。
また、治療し始めてすぐに症状がおさまると、薬の使用を中断してしまう方も見られます。
中途半端な治療は再発や耐性株の出現、周囲への感染のリスクとなります。
必ず医師の指示通りに治療を受けてください。
デリケートゾーンのかゆみに対する市販薬も販売されております。
しかし、例えば抗菌薬や抗ウイルス薬は市販することは許可されていません。
そのため、市販薬では治癒することができずに、症状を落ち着かせているだけの状態となることも少なくありません。
このような場合は頻回に症状が出るようになります。
さらには慢性化してより重症な感染症となってしまいます。
可能な限り病院を受診し、治療をおこなってください。
関連記事:性器や陰部の臭い(匂い)に違和感があるときに考えられる男女別の性病の種類とは?
放置せずにすぐ受診を
性感染症は疲れやストレスなど、自分の免疫力の低下が原因で症状が出ることが多くみられます。
そのため、放置していても自分の免疫力が回復すると症状がおさまってしまうこともあります。
「症状がない」ことが「感染していない」ことではありません。
誤った認識で行動するとパートナーなど周囲への感染を起こしてしまうこととなります。
病院に行くことや、陰部を見せることが恥ずかしいと感じ、病院を受診しない方もいると思います。
感染症を放置して悪化や慢性化した場合、不妊、全身感染症、長期入院となってしまう可能性があります。
少しでも気になる症状が見られた場合は放置することなく病院を受診しましょう。
また、パートナーの感染も考えられます。
できる限りパートナーも一緒に検査を受けていただくようお願いします。
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日常生活でできる予防法は?
感染症に対する予防は、以下があります。
- 不特定多数との性交渉は避けること
- 性交渉時はコンドームを使用すること
治療を受けられているのであれば、症状消失だけでなく血液データ等での治癒確認を行うことは再発予防のために重要です。
これらの病原体に対して免疫ができることは少なく、容易に再感染を引き起こしてしまいます。
パートナーの感染を確認することは、再感染のリスクの軽減につながります。
関連記事:淋病(淋菌感染症)とは?原因や症状、治療期間などについて解説
病院や家来るドクターでできる治療
病院を受診すると診断から治療まで行うことができます。
家来るドクター(往診)では、原因病原体を確認できません。
しかし、医師の経験や、病歴、かゆみ以外の症状を確認させていただくことで、病気の絞り込みや一時的な治療を行うことができます。
病院を受診したほうが良いか迷っている方もいると思います。
家来るドクターでの診察を通じて、医療機関を受診し検査を受けた方が良いかのアドバイスをさせていただくことが可能です。
ぜひお気軽にご相談ください。
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まとめ
今回は、陰部の「かゆみ」の原因や症状、治療法などについて、解説しました。
陰部のかゆみはちょっとした生活習慣の乱れから、重篤化しうる感染症まで幅広い原因が考えられます。
放置することは重篤化のリスクだけでなく、周囲への感染拡大につながってしまいます。
正しい診断、治療をおこなうことが、あなた自身、パートナーなどを守ることにつながります。
正しい知識をつけて、必要に応じて医療機関の早期受診をしましょう。
【参考文献】
・病気がみえるvol.6免疫・膠原病・感染症(第2版)
執筆者
経歴
- 西春内科在宅クリニック
経歴
- 三重大学医学部医学科 卒業
- 四日市羽津医療センター
- 西春内科・在宅クリニック
- 千葉内科・在宅クリニック 院長